正しい恋の始め方

@miron

第1話


この世に生きるほとんどの人には好きな人がいると思う。顔が好き。スタイルが好き。真面目なところが好き。色々あるとも思う。俺にも好きな人がいる。どうしようもないくらい好きな人だ。ただ、俺の好きなところは昔から変わっていると言われる。それは…

「ねぇ。秀哉、大丈夫?ずっと黙りこんでいるけど登校中にぼーっとしてると危ないよ。なにかあったら言ってね。」

小さいころからの仲である舞が話かけてきた。

「ああ、心配かけてすまない。」

俺の好きなところ。それは彼女の「声」だ。この声を思い出すことで何度励まされたことだろう。辛いことがあってもあの声を思い出すことでがんばれた。この彼女への気持ちは揺らぐことはないだろう。

「そういえば今日から新しい子が来るとか先生言ってたよね?」

「そうだったか?」

「そうだよ!秀哉は本当に無関心なんだから!どんな子だろう?楽しみだなぁ~。」

そんなことをはなしながら俺たちは席についた。ちなみに舞は俺の前の席だ。

しばらく窓のほうを眺めていると。

「おーい!秀哉!」

向こうから光樹が走ってきた。こいつは無駄に声がでかい。

「本当にお前は昔から声がでかいな。」

「別に悪いことじゃないだろ。立派な取り柄だぜ。」

「周りからしたら十分迷惑してるんだが。」

「それよりさっき何考えてたんだよ。また例のあの子か?」

「あ、その子のことわたしもしりたーい。」

「その話を大きい声でしないでくれ。それにそもそも覚えているのが声だけなんだよ。前も言っただろ。」

「ちぇっ。つまんねぇの。思い出したら絶対報告な。」

「思い出しても教えないつーの。」

「ほーら。予鈴がなったぞ。席につけ。」

先生が言った。

「やべ。また後でな。」

そう言って光樹は席に戻っていった。

「前にも言ったが今日から転校生がくる。仲良くしてやるように!」

「はーい。」

「それでは入ってくれ。」

教室の扉を開け、廊下からすっと入ってきたその子はチョークを持ち、黒板に名前をすらすら書き始めた。その子はほのかに茶色が目立つ髪に、しゅっとしていてスタイルもよく、誰もが認める美少女だった。

「私の名前は小泉綾といいます。みなさんどうかよろしくお願いします。」

「うひゃ~!綺麗な人。」

生徒たちは彼女の姿をみて騒ぎ始めた。

このとき、俺は驚きのあまり固まってしまった。

「ほら、静かに!では小泉は一番後ろの窓側の席に座ってくれ。」

「はい。」

「これで朝のホームルームは終わりだ。」

ホームルームが終わると生徒たちが一斉に綾の席を囲んだ。

「秀哉!あの子のところにいく?」

「いや、俺はいいや。」

「もう!照れてないで行けばいいのに。」

そういうと舞はすこし怒り気味に綾の席へ駆けていった。

「…別に照れてなんてないってのに。でもそんなまさかな。」

秀哉はただだまりこむことしかできなかった。


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