野良猫の話
黄色い証言
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興味本位で動くと物事の大体は失敗する傾向にある、となにかの雑誌で読んだ気がする。でも結局、人間なんて自分の興味で行動する生き物だろう。だから俺も自分の興味以外で動く気は毛頭なかった。
先輩、と言っても少しだけ年が離れた存在。三歳差でなにか変るのだろうか。興味を持ったのは仕事でよく目にかけてくれる茶髪の先輩と、何を考えているかわからない黒髪の先輩だ。二人は遂行班の一員で、よく世間では知られていない事件の「なにか」にかかわっている。それは裏金のプールだったり人殺しだったり薬物売買だったり常人からすれば目を見張るようなことを請け負っている。そんな危ない人にかかわる俺もどうかと問われれば、きっとやましいことばかりが浮き彫りでて、警察には笑顔で応対することはできないタイプだろう。俺だって在学している
どうしてこんなことを説明しているかというと、今まであまり興味などなかった先輩二名と最近になって関わりが増えたからだ。ふと思い返せば、周りはゆうにおっさんと呼ばれる世代。その中に混ざる若い先輩達は悪目立ちする。二十歳にもなっていないと思われる人間が混じっているのは、違和感でしかなかった。俺はたまたま父親が本社の幹部だから、ツテやコネじみた扱いだろう。それに立場上では支店のバイト。手伝いまがいのことをしているだけで、実質深いところには触れていない。なにをしているのかは「なんとなく」と場に流れる悪い空気で察するだけ。現場仕事も監視役だけだった。
そんな中途半端な俺と違って、いわゆる人殺しの目をしている先輩二人はいったいどんな過去があるのか、少々気になる瞬間がある。
たとえばやたら拳銃の撃つフォームが綺麗だったり、華麗なナイフ捌き。平然と目の前で大金にガソリンをかけて火をつけてみたり、どこから仕入れて来たかわからないけれど重要っぽい情報を使って警察を利用したり、例だけでも数えきれない。特に茶髪の先輩、
現状分析でも訳が分からないチートを引きずっている先輩のどこを手本にすればいいのか悩ましい限りだが、かと言って専属の上司にあたる支店長こと
事務のバイトもしつつ、零次さんのできなかった復讐を俺が代行するのがこの事務所にいる目的。復讐代行は俺が望んで引き受けた、支店長の弱味であり利害の一致。いざとなったら支店長を利用できる切り札になる、と初めこそ思っていたが、いまじゃ零次さんと俺とを繋ぐ信頼関係の本質だと思う。……もっとも、零次さんは俺の直属の上司であり班や組でそこそこ偉い人なのだ。いくら表でも裏でも絶大なる権力を持つ本社の人事主任、
頭をめぐる様々な悩みは解決しない。今日も空気を読んで、口を閉ざす。なるべくうまく立ち回って、今日を生き残ることだけを考えよう。そんなつまらない決意を心のうちに留めて、事務所の扉を開けた。
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