第3話 満たされない



 例えばの話。


 満たされない器が、目の前に存在している。


 どんなに注いでも、注いでも、注いでも。きっとそれは満たされることはない。

 それは漏れてるからかもしれないし、どこかしらに穴が開いてるからかもしれない。


「ほら、なにをしてるんだい」


 誰かの声がする。かなり遠くから。そして響くような。


「どれだけ注いでも、これ以上は無駄だよ」


 誰かの止める声がする。彼はあきらめているようだった。


 僕はまだ、満たされない。もっともっと、注がなくちゃ。







「もう、満杯じゃないか、あとはこぼれるだけだよ」


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