未来から来た小学生

@say37


                       



「〈どこどこ扉〉出して。」

「だから、それ、何なんですか?」

「じゃあ、〈スポンジプロペラ〉」

「ふざけないでくださいよ。さっきから、わけの分からない事ばっかり言って。」

「お前さあ、俺の子孫なんだろ?」

「そうですよ。あなたから数えて10代目の子孫です。321年先の未来からやって来た。」

「じゃあ、〈どこどこ扉〉・・・」

「いい加減にしてください!」

「おかしいなあ、未来には、どこでも行ける扉とか、頭に、こう、乗っけると空飛べるプロペラとか、発明されてるんだろ?」

「そんなものあるわけないでしょ!どこでも行けるって。扉開けた先が海底だったらどうするんですか。あっという間に溺れ死んでしまいますよ。噴火口の中だったら、即、丸焼けです。」

「お前、なんか、極端すぎないか?」

「可能性の問題です。そんな危険な物を、誰が作るんですか?普通に考えても、プライバシーを侵害するような、そんな装置持ってたら、社会的信用を失ってしまいますよ。」

「お前、小学生だよな。」

「そうですけど。」

「幾つだ?」

「8歳です。」

「そうか、プライバシー侵害とか社会的信用とかって、8歳にしては、難しいこと知ってるな。」

「この程度のことは、幼稚園で勉強します。300年以上も先の未来ですよ。人類は進化するんです。」

「そうか、じゃ、スポンジ・・・」

「ふざけないでください!もういいです。ちょっと失礼。」

「痛て!何するんだよ!」

「それ、もうすぐ、猛烈に痒くなります。でも痒かないで下さいね。よけい痒くなるだけですから。」

「な、何なんだ、それ。」

「お仕置きピンセットです。これで、今みたいに腕とか、肩とか、太ももとかを、ちょっとつまむんです。そうすると小さな傷がついて、そこが猛烈に痒くなるんです。いたずらをしたとか、宿題を忘れたとか、そういう子供が先生から受ける罰なんです。」

「おい、なんか、めちゃくちゃ痒くなってきたぞ。これ、どうすりゃいいんだ。」

「だから、痒かないでくださいね。没頭してください。」

「ボットウ?何だそれ?」

「痒みを忘れるために一つのことに没頭するんです。それ以外に、我慢する方法はありません。ということで、さっさと受験勉強に没頭してください。じゃあ、僕は帰りますから。また明日来ますね。」

「おい、おーーい。何だ、こりゃ。痒いぞ。滅茶苦茶痒いぞーーーーーー。」



「昨日は、ちゃんと勉強したようですね。」

「ふざけんなよ。痒くてもだえ苦しんだぞ。」

「でも、没頭したら平気になったでしょ。」

「・・・ま、まあな。」

「じゃあ、今日も。」

「ちょ、ちょっと待てよ。あれっ、カラダ動かねえ。」

「当たり前ですよ。逃げられないように、これを向けられた相手は動けなくなるんです。ちょっとだけ、我慢してくださいね。はい、終わり。じゃあ、さいなら。」

「おい、おーーい。」


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