色の温度
Iris
第1話:茜色
いつからだろう、色を感じなくなったのは
色の区別が付かない訳じゃない、なんだろう色の鮮やかさというか温度というか感じるものが薄いというか・・・
普通科の高校に通う2年生、美術部に所属していて放課後に絵を書いているのが日常。
部員は6人で顔を出すのは私ともう一人の2年、カズハ。
私はコンクールとかには興味がなくて自分の描きたいものを自由に描くのが好きだったただ、カズハは自分の作品に評価が欲しいといってよく、コンクールに応募している。
最近では一緒にやろうとさそわれて私も応募している。
確かに自分の作品が評価されるのは良くも悪くも刺激になるのかもしれない。
いつの間にか賞をとれたら・・・とかそんな期待もするようになっていた。
カズハ「ユウキ、今度のコンクールどうする?」
ユウキ「あれ、テーマなんだっけ?」
カズハ「(指定無し)だって」
ユウキ「うわ、ムリだ、一番めんどうなやつじゃん」
カズハ「ははは、だよね・・・もう一つが、(空)だね」
ユウキ「やるならそっちかな」
カズハ「図書室行って資料みてこようか?」
ユウキ「そうだね」
カズハ「晴れてるから外でもいいけど・・・」
ユウキ「外は帰りでいいよ」
並んで図書室に向かう
ユウキ「髪伸びたね」
カズハ「そう?・・・いわれたらそうかな、まだほったらかしでいけるよ」
ユウキ「うっとうしそうだけど」
カズハ「そうかな?」
図書室の写真集を眺めながら
ユウキ「いいのある?」
カズハ「どうしようかな・・・夕焼けとか海の空のほうが描きやすいかな」
ユウキ「確かにね・・・ありきたりな感じもするけど・・・」
カズハ「あ、もうこんな時間か」
ユウキ「よさそうなの何冊か借りていこうか」
カズハ「そうだね」
部室に写真集を置いて帰り道
カズハ「夕焼けの海とかいいかな?」
ユウキ「確かに描きやすいと思うけど・・・どうする?写真でも撮りに行く?」
カズハ「今日はスマホのカメラしかないからな~」
ユウキ「眺めて帰ろうか?」
カズハ「そうだね」
ユウキ「構図・・・どうしようかな」
カズハ「2人で同じなのもね・・・」
ユウキ「青空と緑で書いてみようかな・・・」
カズハ「その方が色使いがシンプルでいいかもね・・・」
そんな話をしながら砂浜を散歩、火が暮れるのを待ちながら
カズハ「そういえば恋人できた?」
ユウキ「え?どうしたの急に?」
カズハ「君はもてるって、人気あるよ・・・気が付かない?」
ユウキ「気にしたことないな・・・」
カズハ「そうなんだ、告白してみようかって子は何人かいるらしいよ」
ユウキ「・・・べつにいいや、そういうの、絵を書いてるのが楽しいし・・・」
カズハ「そう?」
ユウキ「付き合っても何していいかわからないしね」
カズハ「ははは、そっか」
ユウキ「カズハは?」
カズハ「え?私?わたしは全然・・・私も絵描いてるのが楽しいから・・・」
ユウキ「カズハの方がもてる気がするけどね・・・」
紅く染まりだした空を背にして困った顔をしているカズハの目を見た瞬間、世界の色が薄くなった気がした・・・
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