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振り返った志麻の顔は少し驚いた顔に見える。まさか会うとは思っていなかったのだろう。まぁ俺もそうだけど。
「こんな時間にどうしたの?」
この時間にここで志麻に会うのは初めてだ。だいたいは父である常盤さんと店に来ることが多いから。一度家出をして一人で来たこともあるけど。
「学校帰り?」
「ま、まぁそんなとこね。これからパパとデートの予定なの」
「デートか、いいね」
ここの親子は本当に仲が良いから。父親として常盤さんも嬉しいんじゃないだろうか。
でも、時間はまだ午後二時だぞ? 学校が終わってすぐにこっちに来たとしても、まだまだ常盤さんの仕事が終わる時間じゃないだろう。
「お父さんの仕事が終わるまでどうするの?」
「え、えぇそうね、そこのコーヒーショップで勉強でもしながら待っているつもりよ」
「そう、勉強か。偉いね」
「学生の本分は勉強よ? 当たり前じゃない」
「そんなことないよ、志麻ちゃんは偉いね」
自主的に勉強するなんて、偉い偉い。学生の鑑だ。俺が学生の時なんてどうすれば上手くサボれるかを研究して、出来るだけ勉強しなくて済むようにひたすら授業中にしっかり話を聞くようにしていたくらいだ。絶対に勉強しなくちゃいけない時間があるのならそこでしっかりやって、他の時間に遊ぶってのをやっていたなぁ。なつかしい。
「べ、べつに無駄な時間を過ごしたくないだけよ」
「そう思えるのはもう立派な大人だね」
「え」
まぁ、まだまだパパに甘えたさんだから子供でもあるんだけど。
「あ、今月の新作、抹茶が効いてて美味しいよ。良かったら飲んでみて」
「抹茶が好きなの?」
「いや、期間限定に弱いだけ」
「なんだ」
「志麻ちゃんは違うの?」
大多数の人は結構、限定とかに弱いと思うんだけど。
「私は好きな物しか飲まないタイプよ」
あー、なんとなく分かるかも。
「あれ、コーヒーより紅茶が好きじゃなかったっけ?」
「そうよ、だからコーヒーショップで紅茶を頼むの」
「へー」
そういうのも似合うタイプだよな。
「それじゃぁちょっとだけ歩くけど紅茶の美味しいお店を教えてあげるよ」
「えっ」
「ベリー系の紅茶が好きだったよね? そのお店なら取扱いが多いから」
「覚えていてくれたの!」
寒さで赤くなった頬がパッと華やぐ。こう見えても俺、お客様の好みは忘れないタイプなんで。
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