風と共に参る
カゲトモ
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テイクアウト用のカフェカップ。実はあの上の蓋が苦手だ。だって熱いのに冷ますことが出来なくて、油断して熱いまま口に入ってくるから。みんなどうしてあれで上手く飲めるんだろう、といつも思う。まぁこうやって風の強い日には埃とか入らないし、良いとは思うんだけど、飲むたびにいちいち開けるのもだるいしなぁ。
ちなみに同じ理由でタンブラーも苦手だ。
「おっと」
店から出た瞬間に強風に煽られる。良かった飲みながら外に出なくて。きっと大惨事になっていたはず。セーフ。
あれ?
気を取り直して落ち着いてコーヒーを飲もうとカップを口元に持って行って考える。
見覚えのある後ろ姿に、それでも確信は持てなくてどうしようかなとコーヒーを一口。うーん、熱い。
もし目が合ってそうだったら、声を掛けたらいいか。駅前なんだし、誰が居てても不思議じゃないんだし。
よし。と一歩踏み出す。昼間の駅前はガランとしていて、陽の光と影しかない。花の模様に作られたレンガを踏みしめてその人の近くへ。ってそっちが進行方向なだけなのだけど。
長い黒髪に真っ白なコートが目を引く。コートの下の、黒いタイツの脚はどうしてこうも儚げに見えるのだろうか。寒いのにおしゃれを頑張っているからそう思うのだろうか。なんて。
「あ」
と、俺がタイツに視線を奪われている間に相手が先に気が付いた。
「あなた」
「志麻ちゃん」
やっぱり。
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