水森飛鳥と絶望へのカウントダウンⅢ(思いもよらぬ再会)☆
少し言い方は悪くなるが、こんな名前でも女の人で、
私たち
「私、どうするべきなんですかね。雪冬さん」
☆★☆
「……」
「……」
「……」
教室の空気は悪かった。
クラスメイトたちの大半が他のクラスに逃げ出すほど、悪かったと言ってもいいだろう。
というのも、原因は数十分前の『あの騒動』なのだが。
「それで、私に保健室まで付き添えと? こういう時ほど
「今は、お前に頼んでるんだが」
「何、気まずくて声が掛けられないって? そういう時こそ、空気を読まない振りをしながら声を掛けるのがあんたでしょ? それを何今さら気にしてんの」
「そんなこと一言も言ってないし、酷い言われ方だな」
そんなこと言われたって、何で今になって私が付き添わなきゃなんないのだ。まだ、
「まさか、そう言われても仕方がないことをした自覚が無いなんて、言わないよね? もし、そんなことを少しでも言うつもりなら、会長以上の本気でぶん殴るから」
これでもこっちは怒ってるのだ。
まさか、会長に殴られるまで、自分の行動がおかしいと本気で思わなかったのか?
「それは……」
あ、これは思ってなかったな。
「っ、でも、それと付き添いはまた別だろ」
「付き添い付き添い言ってるけど、怪我したのが腕や足じゃないんだから、一人でも行けるでしょ?」
もし仮に付き添ったところで、さっきの――痛み緩和について聞かれかねないから、正直避けたいのだが。
「行ってあげたら? 久しぶりにまともに会話できるかもしれないよ?」
「そうそう。それにこのままだと、教室内の空気が悪いままだからね。入れ換える意味でも行ってきなさい」
「……分かったよ」
私とて、ずっと教室内の空気を悪くしっぱなしでいるのは嫌だから、私が出ていくだけで良いのなら、いくらでもそうしよう。
「ごめんね」
「気にしなくて良いよ。悪いの、
笑顔で親指を夏樹に向けつつ、そう言ってやれば、奏ちゃんたちに引きつった笑みを向けられる。
何かもう、いろいろとごめんなさい、と内心謝りつつ、夏樹とともに保健室へと向かう。
「それで、まさか保健室の位置が分からないとか言わないよね?」
「言わねーよ」
「あっ、そ。なら、ここからは一人で行きなよ。さっきまで喋れたんだから、一人で行って、説明することぐらい出来るでしょ」
そう言って、別れようとすれば、何故か腕を掴まれる。
「ちょっと」
何これ。
「
何だか久しぶりに名前を呼ばれた気がする。
「……何」
「最後まで付き添え」
「誰も見てないんだから、ここで別れたって構わないでしょ」
お断りだって言ってるのが分からんのか、この幼馴染は。
「……それなら、今聞く。会長に殴られたあの場を解散するとき、俺に何をした?」
「何言ってるのか、分からないんだけど」
「殴られた場所をお前が触ってきたとき、痛みが引いたんだよ。俺の勘違いとかじゃなく、な」
普通の人なら、きっと変な表情を向けたことだろうが、夏樹の痛みが引いた原因は私にあるので、溜め息だけ返す。
「もし仮に私が何かしていたとして、その理由を聞いたところで、どうするつもり?」
「どうって……」
「夏樹には、どうも出来ないよね?」
どうすることもできない。
だって、これは
「保健室までは付き添ってあげる。でも、この話はもうおしまい」
そのまま先行するかのように、夏樹の先を歩いていく。
この世界と
保健室に着けば、ちょうど先生が居たので、さくっと説明して、保健室を出る。何か文句を言いたげな夏樹は放置だ。
「……らしくないでしょ、私」
保健室から離れて、溜め息を吐く。
少しばかり関わらなかっただけでこれとか、私のメンタル、どれだけ弱くなってるんだ。
「……どうするっかな」
こういうとき、友人たちに相談するのが一番なんだろうけど、彼女たちは事情を知らないし、もし相談したとしても困らせるだけだ。
うんうん唸りながら歩いていれば、教室がある方に向かっていれば、何やら見慣れぬ廊下というか通路みたいなものが、
「あれ、こんな所あったっけ……?」
去年、下見したときは無かったと思うし、二年になった今でも今日見つけるこの時まで見たことはなかったはずだと思うのだが。
見つけた廊下の先は、反対側にある校舎に繋がっているのだが……何と言えばいいのか、妙な違和感があった。
「……」
どうするのかを
たとえ何かあったとしても、対処できなくとも、逃げるためだけの手が無いわけじゃない。
「それにしても、暗いなぁ」
明かりが窓や隙間から入り込む光だけとか、電灯があるのに使わないのは球切れだからなのか、それ以外の理由があるのか。
「え……」
まるで導かれるかのように歩いていった先は行き止まりで。
「何で……」
そこには、本来この場に居るはずではない人が居て。
「
何で、この人がこんな場所に居るの……?
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