水森飛鳥の途中離脱Ⅱ(あの時、側にいたのは)
さて、事故に遭って約一ヶ月(
学校にも通えるようになってからは、友人たちやクラスメイトたち、夏樹とハルがどこか心配そうにしながらも、何とか通えている。
これでも復帰直後は夏樹とハルが両親以上に過保護かっていうぐらい、世話を焼いてきたけど、それが日増しに減っていくのを見ると状態としては良くなった方なのだろう(ただ、過保護なくらいの世話に両親は苦笑していたし、家事の方はハルが手伝ってくれていたため、そんなに負担にならなかった)。
夏樹からは目覚めたときの約束通り、ノートをちゃんと見せてもらいました。うん、やっぱり見やすい。
「……っ、」
さて、そんな私が今いるのは、私が
あの時感じた痛みは、今でもどこか鮮明に思い出される。
本来なら、嫌な記憶のある、こんな所に来るべきではないのだが、どうしても確認しておきたいことがあったのだ(ただ、夏樹たちに行くと言ったら、複雑そうな顔をされたが)。
「……っ、確かここからだっけ?」
薄れゆく景色の中で見た、白い
それは、私に対してなのか、否か。
そこにいざ立ってみれば……ああ、私が倒れていた所の真上か。
「……」
再び、よく思い出してみる。
まるでカメラのピントを合わすかのように、声の主を鮮明化していく。
『ごめんね』
謝罪の言葉を口にする人物の顔が、少しずつ鮮明化されていく。
「……うん?」
でもそこで、私は首を傾げた。
気を失うぎりぎりまで鮮明化してみたのだが、その顔の輪郭と目などの位置から、何となく、何となくだが、微妙に見覚えがある気がする。
“白い”とは言ったが、着ていた物は
(って、
つまり何だ。声の主は
「……」
でも、一体、どういうこと?
何で謝った?
次々と疑問が湧いてくる。
それにあの時、事故に遭った人は私だけじゃなかったはずだ。
それなのに、何故あの神様は私を選んだ?
あの世界の舞台が学校で、私が実際に学生だったから?
うんうん唸りながら、来た道を戻る。
「……わけ分からん」
はっきり言って、判断材料が足らない。足らなさすぎる。
でも、謝った人物に見覚えがあるのも、また事実。
「……」
目の前にある建物へ目を向ける。
どうやら、これから人間観察に忙しくなりそうだ。
☆★☆
――
「会長」
一人の女子生徒が、目の前の人物を睨みつける。
「書類に印を押すだけなのに、何でこうも時間が掛かってるんですか!」
「まあまあ、イライラすると、身体に悪いよ?」
それを聞き、ひっく、と女子生徒は頬を引きつらせた。
そんな状況の中で、会長と呼ばれた男子生徒は「何で怒ってるの?」と不思議そうにしていたが、彼女を怒らせてる原因はお前だよ、とは他の役員たちが言えるはずもなく。
そのことに肩を竦めつつ、男子生徒が何気なく外を見れば、視界に入ってきた人物に自然と笑みが浮かぶ。
「会長?
呼ばれて振り向けば、そこにいたのは般若のような、悪魔のような、魔王のような笑みを浮かべる女子生徒。
「ご、ごめん。
思わず逃げ出そうとする神崎と呼ばれた男子生徒だが、それが適うはずもなく――
「では、これを
「はい……」
どん、と目の前に置かれた紙の山に、神崎は諦めたかのように息を吐き、降参するのだった。
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