第45話食客を迎えることにしました
マカダム舗装。
粒径のそろった尖った砕石を敷き詰めて圧し固め、さらに細かい砕石で隙間を埋めて圧し固めることで道を舗装。
タイムスリップで過去に飛ぶ話だと街道を整備する為にちょくちょく紹介される工法。
もっとも岩石創成のスキルを持っている俺は、地面の土を幅6メートルの少しデコボコのある岩石に変換して一辺10センチになるように裁断。
デコボコをつけるのは馬の蹄が掛かりやすくするため。
そしてひとつひとつ石の上面を、雨水が石の隙間へ流れるよう0.2度ほどの傾斜を施していく。
何をしているのかって?王都から俺のダンジョンを結ぶ道を整備してるのだよ。
これが完成すれば王都とダンジョン間を馬車でなら天候に左右されることなく半日で往復が可能になる。
商業ギルドからの熱い熱い要望だ。
代わりに『毘沙門』王都支店の屋根の葺き替えや内装工事、什器の設置とかは商業ギルドが手配をしてくれる。
娘のヤエが学園に通うようになった・・・からではなく、今まで稼いだ金を少しでも王都に還元するためだ。
ついでに簡単な計算と読み書きのできる店員と、護衛を手配するようにギルドに依頼したのだが、護衛は奴隷商を紹介された。
店員は商業ギルドで手配をしてくれるが、護衛は契約でより深く縛れる奴隷のほうがお勧めなのだそうだ。
少しでも多く金を使わせたいのかと聞いたら、全力で視線を逸らされた。まぁいいけど。
「数日前までは踏み固められた道だったはずですが、凄いですね・・・」
森の外れ、王都の城門まで徒歩でも1時間ぐらいの場所まで道路を整備して一休み。
すると黒髪黒瞳の無精ひげ、髪を高い位置でポニーテールに纏めたひょろいという感じの青年が声を掛けてきた。
うーむ。まったく気配を感じなかった。
しかしよく見るとル○ン三世の石川五ェ門に似てるな。ということは・・・
「失礼、某、毛利輝と申します」
青年は懐から一枚の紙を取り出す。
ヤエから連絡のあった、ワ国で世話になった道場での兄妹弟子か。
手紙は・・・うん。ヤエからの紹介状だ。
『宜しく。八恵』としか書いてないのは、事前にこの青年がしばらくの間、うちのファミリーの食客になることを打ち合わせていたからだ。
名前が八恵と漢字なのはささやかな偽装対策。
「ああ、某、幻術でいまは男に見えますが、実は女であります」
聞いてもいないのに、輝はそういって両手の人差し指に唾を付けて眉を擦るような動作をする。
おお本当に見る間に女性になった。って幻術を解くのに眉唾かよ。
ワ国の住人ということは幻術の師匠が狸や狐だったりするのだろうか。
「なんなら鑑定していただいても構いませんぞ?」
実に爽やかな笑顔で両手を広げ鑑定することを勧めてくる。
「別に、性別が男だろうが女だろうが、人間だろうが亜人だろうが関係ないわ。それに、本物ならその辺の対策も込みでしょ?」
素っ気なく返すと、ほんの僅かだが輝の顔が引き攣る。
何が気に障ったかは謎だが、実際、この御仁の性別や種族には興味がないんだよなぁ。
「とりあえず転職が完了するまで、週に最低一日は昼に王都支店での用心棒。予定は
一度言葉を切る。
「報酬は毎日の宿と食事の提供。昼の用心棒一日につき銀貨三枚。受けたギルドの
ギルドや
そして転職訓練は短くても三か月。普通でも半年かかる。
輝は魔法を主力とした戦士を目指すので最低半年は勉強するというからこの条件は魅力だと思う。
ただ、寝食の面倒は見るけど遊興費が欲しいならは自分で稼げということだ。
ちなみにワ国にもサムライやニンジャという剣技と魔法を使う上級の魔法戦士職がある。
しかしどちらの上級職も、剣技を優先し魔法は補助というのが現状で、それが輝には面白くないらしい。
で、金を貯め魔法を主力に戦う魔法剣士の何たるかを教えてくれる劉国に来たと。
・・・ちょっと待って。
「輝さんもしかしなくてもニン・・・いやいい」
怖い顔をしたので話題を逸らした。
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