3章 ありがとう #3

今日のリハビリが終わったあと、すぐに美咲みさの病室に向かった。


扉の前で止まり、深呼吸をした。


そっとドアを開けると予想通り美咲は絵を描いていた。


いつもと同じようにドアとは正反対の方を向いて。


ゆっくりバレないように近づき、手の届く範囲に入ると、僕は両手で彼女の肩に手を置いた。


「わっっ!!おはよう、美咲!びっくりした??」


ちらっと彼女の顔を覗きこむと、両目を見開き、口をあわあわさせている。


鉛筆えんぴつまでも落としてしまっているからほんとに驚いたのだろう。


美咲は僕の方を見るとほっとしたのか、安堵あんどの笑みを浮かべた。


「もう!龍馬りょうま君だったのね!びっくりしたじゃない!」


そう言いつつも美咲は嬉しそうに笑っていた。


「私、ドッキリとかけられたこととかないからどう対応すればいいかわからないよ~」


「その表情リアクションで合ってるよ。」


これで美咲の驚く表情、安心した表情を取り戻せた。


昨日考えた『一石二鳥いっせきにちょう作戦』は大成功だった。


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