第2話
1年前新人だった僕。
明るく元気で真面目、絵に描いたような人間であった。
だから家族や友人はもちろん上司や同僚からも信頼され好かれている人間だった。
そんな僕はその半年後ある事件に巻き込まれ犯人に仕立て上げられた。
真犯人の証拠も僕がやってない証拠もなかった。
会社からはクビにされ、家族も友人もみんな僕の周りから離れていった。
母さん…
「あんたみたいな子産んだ覚えないわよ。」
父さん…
「親不孝者め。」
どうして誰も僕を信じてくれないんだ。
今まで必死に認めてもらえる為に良い学校良い会社に入ったじゃないか。
なんで僕がこんなめにあわなきゃいけないんだ。
一体誰が僕をこんなめに…。
そして家から追い出され、今でも仕事は見つける事が出来ず探している。
そんなある日のことだった。
面接からの帰り道、いつものように自宅へ向かっているとある占い師がいた。
真っ黒いマントをかぶり、猫背で明らかうさん臭いような占い師。
人通りも多いはずのこの道だったが、通る人皆そこを遠ざけるように歩いていた。
僕も変な人には関わらないでいようと遠ざけて通ろうとしたその時だった。
「お兄さん、そこのお兄さん。」
「僕…の事ですか?」
「そうだよ。そこのお兄さん。」
うわ…変なのに捕まっちゃったよ…。
「な、なんでしょう?」
「あんた見た目若そうなのに苦労してそうだね。ちょいとうちでこれからの未来の事占っていかないかい?」
「いえ、僕そういうの信じてないので結構です。」
「まぁまぁそう言わずに、こっちから急に声かけちゃったしお代もいらないからさ。私の暇つぶしに付き合っておくれ」
まるで話し方も見た目も童話に出てくるような魔女だなとこの時の僕は思っていた。
「はぁ。わかりましたよ。そこまで言うのなら貴方の暇つぶしに付き合いましょう。」
そう言って僕は椅子に座った。
特に名前を言ったり、生年月日を書いたりだとかはなくこの占い師はまた話し始めた。
「あんた前は絵に描いたような真面目な人間だったんだね。それが仇となったんだ。うひひ。」
笑い声まで魔女とは。
「は、はぁ。」
「これから先も悪い事が続くようだよ。カードにも水晶にも出ている。まぁ、人生山あり谷ありだからねしょうがないねうひひ。」
「悪い事が続く?今の状態が?どの位ですか?いつまで耐えれば良いんですか!」
「おやあんたこういうのは信じないんじゃないのかい?」
とニヤリと不気味にその魔女は笑う。
「そっ…」
「まぁいいさ。でももし、あんたが今過去を消し去りたいなんて思っていたとしよう。もしその過去を消す事ができたらどうする?」
「過去を消し去る?そんなばかな事できるはずがない。」
「もしもの話さ。」
「そりゃできればこんな過去消し去りたいですよ。もし本当にできるのなら。」
「そんなあんたにとっておきのものをあげよう。もちろんお代はいらない。」
「いいもの…?」
明らか怪しいが、ここまで当てる事ができた占い師だタダで貰えるなら貰っておこう。
「これさ。」
「こ、これは!こんな子供騙しな。こんなんで過去が消せるわけがない。」
「騙されたと思って使ってごらんよ。」
「こんなただの消しゴムで過去が消えるなんてそんなばかな事あるわけがないだろう!」
「そうさ。これが“ただの”消しゴムならね。」
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