第2話じじいと提案

なにも変哲のない高校生である、俺こと間宮秋まみやあきは絶句していた。


「ほんとに来ちゃったみたいだよ、夢じゃなかったんだな。はは、、、」


俺の目の前に広がる景色は一面金色に広がる麦畑だけだ。本当なら、現代2017年の日本ならありえないほどの広大な田舎の土地。一軒だけ見つけることができた小屋も屋根は藁でできており、壁は木造建築。現代の日本において藁の屋根の家などそう見つからないだろう。


「とりあえずこの家の人に話しでも聞こうかな。

はぁなんでこうなっちゃったかなぁ、、、」


俺は、自分に巻き起こった約二時間前の出来事を思い出して、肩を落とした。





二時間前

今日は日曜日の午前10:00 (部活に入っていない)学生なら誰もが至福の時として赴くままに過ごしているに違いない。そういう俺も大好きな小説を読みながら休日を満喫していた。


「この小説ももう3周目かぁ。異世界転生もの、ちょうおもしろいし、異世界転生憧れるけどなぁ、最近だと異世界に転生するまでもなくスキルやなんやらで無双してくるのも増えてきたし、別に異世界じゃなくてもいいんだよなぁ。魔法とか使えたらなぁ。ってなに中二病発言してんだよ、俺。、、はぁ、 、、飲み物取り行こ。」


間宮家は一軒家の二階建てで、両親と兄と妹がいる五人家族だ。二階には子供たちの部屋が三つ並んでいて、俺の部屋は扉を開けるとすぐ目の前に妹の部屋がある。だから扉を開けると目の前にはいつものように「ユキの部屋」と書かれた可愛らしいプレートがついた妹の部屋があるわけだが、なぜか今日だけ見たことないような景色が広がっている。今、目の前にある景色は端的に言うといろんな色の絵の具を混ぜたような禍々しい色の部屋だ。


「、、、、、、、、え?」

突然の出来事に唖然とした。


いやいや、おかしいだろ。なんだこれ!?

これ進んだら下に落ちるとかないだろうな。

ってかおい、おれ!なに進む前提で話進めてんだよ

絶対おかしいだろ、うちの廊下どこやったよ

なんだこの展開、まるで小説みたいじゃねーかよ

、、、、、小説?、、あっこれは夢だ。絶対そうだよ!

さっき小説読んだ時に寝落ちしたのか!?


「疲れてんのかな、、、寝よう。」

これが夢か現実かはもう知らん。

とりあえず寝よう、寝て起きたらきっといつも通りだ


俺はなにもよくわからないまま、静かに睡魔を待った。





「ふぁぁぁ、ねちゃってたか。せっかくの休日を棒にふるったなぁ、、まぁいいか、とりあえず飲み物でもっと。 あれ?、、なんか大事なこと忘れてたような、、まぁいいか。確か冷蔵庫になんかあったよな。」


眠い目をこすりながら扉に向かった。

扉を開け、一歩を踏み出すが、そこに地面はなく、俺の足は空を切る。


「え?」

なにも理解できないまま体が急降下していく。

急降下する最中、俺はやっと眠気から覚醒し、一つのできことを思い出した。


「あれ夢じゃなかったのかよぉぉ!!」

いつのまにか俺の意識は飛んでいた。





「、、、っくるぅ、、くっくるぅ、、くっくるぅ」


なんか聞こえるな。なんの音だ?、、


「くっくるぅ、、くっくるぅ、、」


なんだ?こんな音知らないぞ。


「くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ」


、、、、鳥か?


「くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ、くっくるぅ」



「うるせぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!

、、ん?なんだ?うわ!なんだこれ!いき、、ものか?えっほんとに鳥??、、、ってかここどこ!?」

俺が覚えてる限りでは、部屋の扉を開けたら急にへんな空間に落ちてきたはず。でも、ここは打って変わって真っ白な空間だ


しかも、俺の周りに沢山の丸い球体のような鳥が沢山いる。さっきの俺の大きな声に驚いたのか、顔の付近にいた鳥?は怯えた表情で離れていった。


「ほれ、バルーンバードが驚くじゃろうが。静かにせんかい。」


急に、じじいの声が聞こえた。


「誰だ!!」


「そう慌てるな、ほれわしはここにおる」


「うわっ!」

気づいたら、俺の後ろに謎のじじいが立っている。こいつなら何か知ってるのかも?驚いてる暇なんてない。とにかく今の状況を問いたださねば。


「やい、じじい!ここはどこだ!おれんちの廊下どこにやった!」


「ほれ、年寄りに向かってじじいとは何事じゃ」


俺はじじいの持っている木の杖で頭を叩かれた。

ぽんっと気の抜けた音だったが、クソ痛い。

なんだこれ、音詐欺じゃねーか!


「いってぇ、、!なにすんだこのクソじじい!」

決定だ、こいつはクソじじいだ。


「より悪い敬称つけて呼びよって、、。

まぁよい、っでここが何かしりたいんじゃな?よいぞ、教えてやろう。まぁお主をここに呼んだのはわしじゃしな、説明するのは当然じゃな」


は?お主をここに呼んだのはわしじゃしなだって!?

いや、でもそんなことはまぁいい、それよりも、一刻も早くこんなところから抜け出さねば。

「お前が俺をこんなところに呼んだのか!!早く家に帰せ!!」


「まぁ待て、わしの話を聞くんじゃ」

「うるさいわ、早く家に帰せ!」

「はぁ、ほんとうに帰していいんじゃな?」

「当たり前だろ、早く帰してくれ」

「今、お主を元の世界に戻すとお主死ぬぞ?」


えっ死ぬ?俺が?

「嘘つくな!俺はこんなにピンピンしてんだぞ!自慢じゃないが俺は今まで皆勤賞を逃したことないんだよ!」

そうだ、俺が死ぬはずないじゃないか、インフルエンザにもかかったことないんだぞ!


「別にお主は急に病が発病するわけでも、事故が起こるわけでもないぞ」

「じゃなんで死ぬんだよ!」

「お主がここにくる前のことを思い出してみろ」

「俺がここにくる前?」


俺は確か、急にへんな空間が現れて、疲れてるんだなって思ったから一旦寝て、起きて飲み物を取りに行こう扉を開けたらここに落ちてきたんだ


「そうじゃ、お主は飲み物を取りに行こうとしたんじゃ」

「それとなんの関係が、、!」

「お主は冷蔵庫に飲み物を取りに行く、そこでお主は牛乳を見つけるんじゃ。そして牛乳はお主の好物じゃな。」


そうだ俺は大の牛乳好きだ。小学校の給食の時、5人班の全員分の牛乳を飲んだことだってある。


「まぁ案の定お主はその牛乳を飲むわけじゃが、在ろう事かその牛乳は腐っておった。お主はこの後、自室に戻った後腹痛を伴う。そして運悪く家族は皆家にいない。誰も助けを呼べずにバットエンドじゃ」


たしかに、両親は母方の実家に帰っていて、妹は友達の家、兄はサークルの合宿で家にいない。

いや、でもそんなことより、、


「死に方だせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


死ぬにしてももうちょっとマシな死に方あるだろ!腐った牛乳で死ぬなんて、ダサすぎだろ!丈夫だけが自慢な俺の体なぜ腐った牛乳に負けたし!

いや、よく考えろ。俺は今、牛乳が腐っていることを知った。このまま帰っても俺は牛乳を飲まない。これで死なないぞ!


「もちろん、記憶は消すぞ?」


くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

このじじい心読めるのかよ!

もう手詰まりか!?考えろ!考えろ俺!


「諦めろ、お主は死ぬんじゃ。、、、、わしはそんなお主に提案するためにここに呼んだんじゃぞ?」


「、、は?どういう事だ、、、?」

「まぁまずわしの紹介をしようか。わしはある時代の七人の権威の一つ大賢者じゃ。その時代とはお主たちの生きている時代の遠い昔の時代、まだ魔法が生きていた時代じゃ。そこでは多種多様な種族が共に生きていた。わしら七権威その時代の象徴のようなものじゃな」

「大賢者、、、?七権威、、?遠い時代、、?」

「何もわかっとらんのじゃな、、、まさかここまで馬鹿とは、、」


うるさいわ、そうだよ俺は成績オール3の可もなく不可もなく人間だよ


「お主の時代でいうとじゃな、メソポタミア文明というのがあるじゃろ」


あぁそれなら俺も知っている。


「そこにはその時代では考えられないほど精巧な物体「オーパーツ」なるものが発見されているじゃろ。あれはどうやって作られたと思う?」


「それはあれだろ、、人が頑張って、どうにかしてだな」


「お主は本当に馬鹿か?その時代で作れるほどのものじゃないと科学なるもので証明されているから「オーパーツ」と呼ばれているんじゃろうが」


たしかにそうだ、世○まるみえでそんな特集があったな。

じゃあどうしてできたんだ?

、、、、、、、、魔法?確かじじいが魔法が生きていたとかなんとか言ってたな。


「やっと理解したな。そうじゃ、あれは全て魔法でできたものじゃ。まぁ今となっては「オーパーツ」も魔力が抜けてただの物体になってしまっているがのぉ。」


「っでそれが俺への提案となんの関係が?」


「そう慌てるでない、その時代の名前は[アルフェンス]今の時代では考えられない世界じゃ。アルフェンスでは、沢山の種族が生きていた。人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、龍族、魔族」


また、テンプレのような種族たちだな


「皆仲良くしていた。争いも少なからずあったが、それでもなんとかやっていた。しかし、一つの出来事が全てを狂わせたのじゃ。」


「一つの出来事?何があったんだ?」


「ひとりの天才な人族の誕生じゃ」


「天才の誕生?それがなんの意味が?」


「種族にはそれぞれ、秀でた才能があった。

人族は優れた頭脳、獣人族は類い稀な身体能力、ドワーフ族は高い技術力、龍族は圧倒的パワー、エルフ族は癒す能力、魔族は湧き上がる魔力。それぞれの能力を使い均衡を保っておった。たしかに、人族でも魔力を有するものもいたし、頭脳を持つ多種族もいた。しかし、その天才は全てを持っていたのじゃ。」


「全て、、?」


「そう、彼は人族に余りある魔力を有し、圧倒的なパワー、スピード、技術、ましてや癒しの力さえも持っていた。人族は彼を神と崇めた。そこまでは良かったのじゃ。しかし、その天才は現状に不満を抱き出したのじゃ。『どうして自分が他の種族と同列なのか』と。そして彼は人族をまとめ上げ反乱を起こした。初めは、人族対多種族じゃったが、多種族同士の共闘には無理があったんじゃ。いづれ多種族の連合は崩れ、全種族の戦争に成り果てた。そしてその戦争に勝った人族は今もお主の時代になって生きているという事じゃ。」


長々と話しされたけど、なんとも作り話くさい話だなぁ。しかも、半分ほど理解できなかったし


「そこで、お主に提案なんじゃが、この時代の戦争を止めて欲しいんじゃ」


「俺にこの天才を殺せってことか?」

まず言っておこう、俺にはそんなこと無理だ。平凡な学生にそんなやつ倒せるわけないだろ、このクソじじい。


「いやいや、そんなことをしろというわけではない。第一にお主がいく時代には彼はもうなくなっておる。天才も寿命には勝てないんじゃ。それに黒幕は彼じゃないんじゃよ」


こいつじゃねーのかよ!

ってか死んだんかい

で、じゃあ誰が黒幕なんだよ


「彼は神として崇められたというたじゃろ。その崇めた奴が本当の黒幕じゃ。」


「じゃあその天才を崇めた人族を倒せってことか?」

またしても倒せってか、だから倒せるわけないだろうに


「別にわしは人族だけとは言っとらんぞ?」


へ?


「その集団は別に人族だけじゃないのじゃ。獣人族、ドワーフ族、エルフ族、魔族に渡る種族で構成されておる。」


人族に圧倒的な力が備わり力に過信して多種族を滅ぼそうとしたって話ならわかるけど、どうして多種族で手を取って戦争なんて幕起こしたんだ?わけわかんねーぞ

「どうして多種族で戦争を起こそうとしたんだそいつらは?なんか意図でもあったのか?」


「ないと言ったら嘘じゃろうし、あるとも言えんな」


どういうことだ?


「彼らはただの殺戮狂じゃよ、ただただ人が殺したかった。そんな意思の集まりが天才を利用して戦争を引き起こしたんじゃ。」


はぁ?なんだそれ、ただひとがころしたかった?

そんなことのために戦争を、、?


「頭、、おかしいんじゃねーのかよ!」

俺はどうして怒りが脇だってくるのかわからなかったが、それでも許せないという気持ちが溢れてきた。それと同時に一つの疑問が生じた。


「そんな怖い顔するでない」

じじいになだめられる。

そしてまた一つの疑問が生じた。

「あっ龍族。龍族はどうして入っていないんだ?」

「彼らは誇り高き種族だ。自ずから戦争しようとする奴なんておらん。」


へぇー、種族の中にもそれぞれの思想みたいなのはあるんだな

「っで結局俺は何したらいいんだ?」

なんか色々喋ったけど俺が何したらいいか全然言ってねーからなこのじじい


「そうじゃったそうじゃった、本筋を忘れておったのぉ」


おいおい、忘れてたのかよ。

このじじい、ボケてんのか?


「わしはボケとらん」


うわっ!またこいつ人の心読みやがった


「それでじゃが、お主には今険悪な中になっとる多種族間の中を修復してもらい、そやつらの力を借り、黒幕を探し出してやっつけて欲しいのじゃ」


「ちょっと待て、多種族の中を取り持つのと敵を倒すのはわかるが、えっ黒幕知らないの?」


「うむ」


うわぁー、こいつ使えねー。ドヤ顔で「うむ」とか言っちゃってるよ。そこら辺全部人任せかよ。

「ってかそんなことより、何度も言ってると思うが俺は平凡な高校生だ。普通の人間おろか、ましてや魔法とか使う奴らなんて倒せるわけないだろ。」

そうだ、俺には戦うすべがない。こんなこと諦めてもらって俺はちゃんと生かせてもらおう。


「そう、そうなんじゃ。お主はただの平凡すぎる高校生じゃ」


自分で言うのはいいけど、他人に言われたら腹たつな。


「そこでじゃ、お主に一つ魔法を与えよう!」

「魔法!?」

なんともめんどくさい事に巻き込まれた俺だが、この時だけ少しワクワクしてしまったのは俺だけの秘密だ。








拝啓 お母さん、お父さん、兄さん、妹


僕はひょんなことから時代を超えて、世界を救うそうです。それにはいろんな人の力を借りなくちゃいけないそうです。でなければ僕は死んじゃうそうです。帰ってきたら冷蔵庫の牛乳は捨てておいてくださいね。それでは次会うまでお元気で。


ps、俺、いつになったら家に帰れるかな、、、

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