君の理由、僕の解答。
散花
プロローグ
コールド・ケース 00
一年前、妹が消えた。
もともと病弱なため、四六時中家にいて学校はおろか、ろくに外にも出ていなかった妹。
『
紺は僕が学校から帰るといつもリビングで「おかえりぃーお兄ちゃん」とフニャッとした笑顔で迎え出てくれた。
その日はたまたま委員会の会議がくだらない理論の応酬で長引き、家に帰るのが遅くなった。夜9時近くにはなっていただろう。僕は一刻も早く帰りたかった。だって紺の誕生日だったから。
15歳の誕生日。もちろんプレゼントも用意した。毎年恒例でやってきたことだけど、年頃の女の子がほしい物なんてわからないからクラスメイトの女子に聞いて回り、馴れない買い物をするのも似つかわしくなかったが実は楽しかったりもした。
12月25日、世間はクリスマス一色で枯れ木が可哀想なほどにきらびやかにされている。彼らも浮かれ気分のようだった。
そんなのは横目に家へ走りぎみで帰る僕。誰よりも一番浮かれていたのだろう。頭のなかは帰ってプレゼントを渡し、それを受け取った紺の笑顔という妄想で満たされていた。
「はぁ、ただいまー」
息を少し切らし、けれど帰りの知らせは家中に響く大声で……
…………響く?それはとても違和感があった。いつものこの日なら食事の準備やらで忙しない音がしていたはず。たとえ僕が少し遅く帰っても待っていてくれるものだと思っていたが……
「みんな、寝たのか?」
声にだし確認するように尋ねてみたが返事はない、だけどそんなはずはない。だってまだ夜9時過ぎ……
ハッとした。紺に何かあったのではないかと。病弱で外に出ていなかったのだからいつなにがあってもおかしくないとは思っていたが……
僕は暗い廊下をバタバタと走り、リビング前までたどり着いた。電気がついていなかった。即座にスイッチを押し、
「紺!!」
と大声で呼び、リビングをみた。
やはりいつもの「おかえりぃー」はない。代わりにいたのは、母さんと父さんだった。
二人ともなんとも言えない顔をしていたのを覚えてる。
「あれ、紺は……?」
てっきり紺が倒れたのだとばかり思っていたから少しだけホッとした。けれど
「疲れて先に寝てるかんじ……?」
「………………」
何を聞いても二人はだんまりだった。言葉を探しているような感じもした……
「ちょっと、」
「行方……不明……なんだ」
僕が詳細を催促したのと同時ぐらいに重たい口から出た言葉は、想像すらしてなかった。
「え?」
紺が……?行方不明……?家から出ていなかったのに……?誘拐……?なぜ?
混乱して疑問がいくつも浮かびすぎてどれも言葉にできなかった。
先に口を開いたのは父さんだった。
「誘拐ではない。私たちも家にいたし、第一この家に入られたらすぐわかる。」
「じゃあなんで!!」
「わ、わからないわ!ただ、今は紺を信じて……」
強く出た僕の言葉に押されるように母が促したが納得いかない。
「いや警察に届け出ようよ!外に出歩きなれてないんだし、すぐみつか……」
「警察はダメだ!」
父さんが遮る。
「なんでだよ!」
「忘れたのか、私たちは由緒ある神代の身だ。警察など頼りにもならん。」
「ッまた神代かよ!」
「紺は!紺はどうするんだよ!きっと今ごろどこかで迷って寒いなか泣いているに決まってる!」
「……私たちで探すからお前は部屋に行き頭を冷やしなさい。わかったな」
「………………」
自分で頭に血が上っているのはわかっていたし、父さんに言われるとなにもできないのが僕だった。仕方なく荷物をすべて持ち重い足取りでズルズルと部屋にかえった。
僕は次の日は学校を休み、必死に街中を走り回り紺の行方を探した。心当たりなんてもとから外に出なかったからあるはずもなく、当てもないままひたすらに街の中をくまなく……
次の日も休んで探そうとしたが父さんが許さなかったため学校帰りに夜中近くなるまで探した。
父さんも母さんも、それに神代に遣える人達も探していたようだったが、それでも紺はみつからなかった……
時は日に日に早さを増すように流れていき、僕は付属の大学へ進学しその一年もすでに残りは少ない、気づいたころには紺が消えた12月になってしまっていた……。
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