異世界でニートって許されますか?
凪風鈴
第一章 不本意ですがニートになりました
第1話 神だからね☆
―異世界転生
それは地球とは別の星に自分の魂ごと転生しちゃうとかいう、皆さんお馴染みのストーリーである。
代表的な転生手段とかはトラックに跳ねられる、とかなんとかという、わけのわからん手段だ。
さて、早速ではありますが私、
死因は多分病死。
元から体が弱かったため、18歳まで生きていられればよかったのだが人生あっけないもので、つい先程ぽっくり逝ってしまった。
……
さっきからずっと疑問に思ってる事がある。
死んだ事はいいんだ。元から分かっていたし、それが早く来たって事だしわからなくはないんだ。
なんでこうやってかんがえられるのかなーって。
天国か地獄のどちらかに行くはずなのになんで真っ白な空間になんで俺は寝そべっているのかなーって。
まあ、それもまだいい。まだいいんだ。
なんで俺の目の前にあからさまにチャラいオーラ満載の男が韻を踏めてないラップしてるのかって思うんだよね。
チャラ男は金髪で襟足が妙に長く、普通の無地の紫のシャツにダボっとした短パンにビーサンという、いかにもチャラそうな感じだ。
てか、ラップやめろ!聞いてるだけで胸がムカムカするラップが妙に鬱陶しい!
ここは一つ、新しく人生を歩み出すものとしてガツンと言わなければならないな。
「おぁ、あっ…ゴホン、あの〜…どちら様です?」
まあ、初対面だしいきなりガツンと言うのは失礼だな、と思いました。コミュ障ってわけじゃないんだよ?優しさってやつだよ?
そして、チャラそうな男は俺の声に気づくと鬱陶しいラップをやめてこちらに向く。
「お、チャオチャオ〜、初めましてだね〜、ボクの神ラップで起きちゃった感じ?」
もうチャラい、見た目通りやんけ!
「ボクの神ラップマジキテるわー、死んじゃった子達を蘇らせるレベルだわー」とか言っちゃってるよ!
ここは鬱陶しいラップを聞かされる地獄か何かなのか?もしかして俺、記念すべき第一号目に選ばれちゃったの?
「あー、ボク一応神ね?だからチャラいとかそういう風にマジ思わないでね?うっかりくしゃみしてホモしかいない世界にマジ飛ばしかねないから、あと神ラップマジバカにしないでね。そこんとこマジよろしくね〜」
マジマジ使いすぎやろ。モジモジしてる俺よりマジマジしてるやん。
「……僕の考えてる事とかわかっちゃう感じですか?」
「神だからね」
ドヤ顔で神は言う。
やばい、悪徳宗教に捕まった気分だ。捕まった事は無いけど絶対こんな感じだ。
ってか、こういう状況って女神様とかに導かれる感じじゃないの?
「ちなみにぃ〜、君が小学二年生の頃に病院のナースさん(人妻)に恋心を抱いてた事もわかるよ」
「ちょ…!もう死んだけどまた死にたくなるからマジでやめてください…!」
神だ!こいつ神だ!悪魔みたいな神だ!
「小二にして小児科の人妻ナースの扉を開いたカズトくんに神だと信じて貰えたところで、だ」
しょうもないことをいいながらチャラい神は真剣な顔になる。
同時に場に真剣な雰囲気が流れ、俺はゴクリと唾を飲む。
神はパチンと指を鳴らすと古そうな巻き物が神の前に現れた。かなり埃っぽい。
「うわー!マジキタネー!ボクマジこういうのさわれないんだよね、ほらボクって潔癖な所あるじゃん?」
いや、知らんがな。
ブツブツいいながらも巻き物を広げて神は、
「えー、今回、真鍋一隼様は短くも悔いのある人生で幕を閉じてしまいました。そこで我々、神一同は真鍋様を異世か--へぶっしょっ!」と、豪快にくしゃみをし僕は神の前から僕は姿を消した。
「おいいいいいいい!!」
▽
叫んだ後、一瞬、目の前が暗くなったがどうやら異世界にきたらしい。
神のくしゃみが転生のスイッチになってるのはマジやっべー。神の口調伝染するくらいマジやべーよ。
…もしかしてホモしかいない異世界じゃないよね?
めちゃくちゃ不安を覚えながらもとりあえず来てしまったのだから、考えつつと周囲を確認する。
まず、自分の確認をすると死んだ時の病人用の服ではなく異世界っぽい、柔軟性のなく丈夫そうな服に変わっていた。
鏡はないので容姿うんぬんはまだわからないのがいささか辛いところだ。
そしてだ。
…なんで俺は牢獄にいるの?
「いきなり死刑とかなんて残念過ぎるよ…はぁー、ツイてないな〜」
一人で愚痴ってると、
「誰?」
「あ?…うわわ!」
完全に一人だと思ってたので突然の声に驚く。
声の方に向くと、かなりボロボロだが元はドレスか何かだったと思わせる服を着ていて、黒髪で毛先がツンと立ったショートヘアの可愛らしい女の子がいた。
黄色い猫の様な目をした彼女は俺に警戒したのか警戒心をむき出しにし、
「あなたいつからそこにいたの?常に探知は張ってるのにそれに引っかからずに人間がここまでくるとは流石ね。……んで要件はなに?私の首とか?」
「首って…恐ろしいこと言うなよ…てかここはどこなんだ?」
言葉は普通に通じるあたりホッとする。
「首じゃないの?変な人ね…じゃあ処女とか?」
頭の中で~敗戦国の未経験姫君との牢獄プレイ〜って想像しちゃってナニかが元気になるからやめて欲しい。
「いや違うけど、ちなみにここはどこなの?」
そういう事に興味無くはないが一応理性は保っておく。
「処女でもないの…?……もしかしてあなた、肛も―」
「いいからさっさとここがどこか答えろや!変態女!」
「なっ…!」
なんて女だ、初対面の相手にいきなりアブノーマルなプレイを聞くとか飛んだ痴女じゃないか!
絶句する彼女を見て、これからの異世界生活にとてつもない不安に襲われる俺であった。
▽
「まさか、転生者だったとはね。それでここに召喚されたのは最高に運が悪い事ね。この場合、最低に運が悪いと言った方がいいのかしら」
頬を膨らませて怒る彼女もそれなりに絵になるが、とにかく情報が先だ。
彼女の情報で分かったことは、僕以外にも転生者がいる、との事だ。
この世界において転生者は元の世界よりもかなり強くなるらしいが、僕は元から身体が弱かったので健康になったくらいの感覚だ。
そしてここが貴族の家の地下牢、と言う事がわかった。久しぶりに神っていないんだなって思いました。
「それで、なんで痴女はここに?」
「痴女って何よ。人の牢獄に勝手に上がり込んでおいて態度がでかいわね……私はね、貴族の飼い犬に負けたからよ、ここの貴族はね、魔人族趣味なの。魔人族を犯すっていうね。んで、私は魔人族の村長の娘なの。この国に魔人族の権利は無いから何されても誰も何も言わないから、ここの貴族は村一番の美少女よ私に目をつけたってわけよ」
うわぁ…自分で美少女とか言っちゃうんだぁ…。
「それは不幸だったな……でも見た目は普通に人間っぽくないか?」
「見た目はね。この国はね、血統が全てなの。いい?これはね、大昔のはなしなんだけどね―」
大昔、この国では人間族と
本物の魔族とは誰もが想像する通り、人間みたいな形ではなく、地球でいう化け物や神獣みたいなものだと僕は予想してる。
この時の人間族は全身、毛にまみれた獣みたいな形をしていたらしい。
互いの種族同士、常に戦争をしていたのだが結局人間族が勝った。
そして、魔族は人間族の奴隷へと堕ちていった。
人間族の中には奴隷を自分の性の
そして人間族の種から生まれてきたものは人の形をしつつ、耳や尻尾などが生えたモノであったらしい。
そこから様々な混血種が増えていき、奴隷から解き放たれる者もいたがその中で魔族を使役する力をもつ種が現れた。
そこから人間族はその種を異端と認定し魔人族と名付け、徹底的に迫害した。
魔人族は誰でも魔族を使役する力を持っておらず、力を持つものが死ぬと他の魔人族に勝手に受け継がれるようになるシステムらしい。
「じゃあ、お前もその力が?」
「持ってないわ、力を持つ者は魔族のいない遠くの地で死なないために素晴らしい待遇がされるそうよ」
「じゃあなんで迫害されるんだ?」
「そんなこと知らないわよ」
「ふーん」
「ふーんって何よ!もうちょっと興味持つフリでもしなさいよ!」
俺はキーキー怒る彼女を見て大分心が落ち着いた。こいつはこいつで、なんでここまで落ち着いているのかは不思議ではある。
あ、そういえば大事な事を聞いてなかった。
「そういえばさ、お前なんて名前なの?」
「え?名前?」
「そうだ、名前。俺は真鍋一隼だ」
「魔人族に名前なんてないわよ」
「え?」
ちょっと困ったな…。
「じゃあ村の皆からはなんて呼ばれてるんだ?」
「村長の娘よ」
…まあ、無くはないけどさ…ならば、
「友達や知り合いをなんて呼んでいたんだ?」
「二番目の一人っ子、四番目の妹」
この子普通に言っちゃってるよ…
「親友は?」
「しんゆう」
そこは普通なんかい!いや、普通じゃなかったけどこの流れからだと普通や!
「もともと魔族に名前をつける習慣がなかったからかしら、自然とその習慣が残っちゃったのかもね」
いやいや、俺だって地球にいたころは学校を病欠しがちだったけど「病人のあいつ」とか「死にそうなやつ」ってあだ名があったくらいだからね?
…よく考えてみたらあだ名じゃない可能性どころかいじめられてた可能性が出てきそうだからこの話はやめておこう。
「まあいいや、今日は色々ありすぎて疲れたから俺は寝るな」
「えっ!目の前に美少女がいるのに添い寝すら所望しないの!?」
「はいはい、おやすみ」
「えー!本当寝ちゃうのー!?えー!」
村長の娘がうるさいがもうかなり消耗してたので自然と寝る事ができた。
▽
「はいはいチャオチャオ〜」
「は?」
夢なのか?
「なんでまたここにいるんだ?」
「いやー、僕もね?こういうめんどくさい事はしたくないんだよ、わかる?でもね、神といっても僕より偉い神なんてめっちゃ多いんだよ〜。シクシク」
泣き真似がイラッとするなぁ…。
「…で?なに?俺はまた死んだとか?」
「違うって、僕さ、ホラ、くしゃみしちゃったじゃん?」
あぁ…あの後が衝撃的で忘れてたけど完全に説明不足だったじゃん…
「そういえばあったな」
「だからね、飛ばす異世界を間違っちゃったみたいなんだ…しょんぼり」
「…は?」
…はぁ?!なんじゃそりゃ!
「や、ほんとゴメンってば〜今から本来、君の行くべきところに送ってあげるからさ〜」
「そこってどんなところなんだ?」
「ホモしかいない異世界」
ふざけてるんじゃないか?初めて神殺しのスキルが欲しいとすら思ったぞ。
「却下だ。断固拒否だ。このまま間違い続けてくれ」
神のお告げとはいえ本当にその異世界には行きたくないのでやめて下さい。
「えー?でも君のいる所はかなり危ないよ?まじデンジャラスだよ?ホモの世界だと男根オールクリアだよ?」
ホモしかいない異世界もデンジャラスなんだけど…
てか、男根オールクリアってなんだよ…ズル剥け確定演出だろ…
「まあ君がいいって言うなら全然いいよ〜ボクも上司から怒られなくてウィンウィンの関係ってやつじゃね?」
よかった!神っているんだなって思いました!神様バンザイ!神まで喜んでるのが気に食わないがとりあえず安心だ!
「そういえば、俺の体ってどうなったんです?もともとの病弱さが無くなってるような感じだったんだけど」
「あーそれね、カズトくんもともとがダメダメのグズグズすぎる病人だから強くなってもその世界の一般人なんだよね」
そこまでけなさなくてもええやろ。
まあなんとなくは、わかっていたがかなりの好待遇だ。病人のまま送られてたら即死の可能性もあったからな。
「言葉は普通に通じるんだけど異世界って日本語なのか?」
「そんなわけないでしょ?発想力テラ貧困でしょ、そこん所はなんか神的なパワーで上手くちょちょいとやってあるから細かいこと気にしちゃダメだよ」
バチコーンと音がなりなりそうなくらい勢いよくウインクする神。
小馬鹿にされるがここは我慢する俺、優し過ぎる。
神は一息つくと、
「他にも聞きたいことあると思うけどそろそろバイビーね〜。生きてる人間に話しかけるのはマジレアだから、スーパーなウルトラなレアだからね」
最後までチャラチャラしてた神はパンパンと手を叩くと周りが徐々に暗くなっていった。
そしてやっと俺の異世界生活が幕を開けるのであった。
いや、戻っても牢獄の中でしたね…ハイ…。
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