君を懐かしく思うと、

シンエンさま

君を懐かしく思うと、

昔の君と会いたい。

あの時みたいに、単純なように、

僕らは子供らしい、稀に楽しい。


今になってもよく思い返す。

思い返しては会いたくなる気持ちが

懐かしい涙を零す。


昔の君と会いたい。

あの時には、時間をも忘れ、

純粋な青春があるからこそ、

時間が無限なように感じた。


今になっても記憶は蘇る。

でも、君はもういないんだ。

記憶から抜け出したんだ。

籠にいる鳥が抜け出すかのように。


世間の厳しさを味わった。

君も、僕も、時間を過ぎては

世間を深く知っていく。


昔のままに、僕は取り残された。

一人で取り残された。


大人になった君は

立派な事をしあげると、

心が固くなっていった、

僕らの思い出を捨てていった。

僕には思い出は捨てがたかった。


昔の風景に、僕は独りぼっちでいる。

僕以外に一人としていなかった。


大人になった僕は

立派な事をしあげても、

心が昔のままであった、

僕には思い出なんか捨てられなかった。


君と僕だけの秘密なんだ。

あの時代に起きたことが。


この時代に新しいシェアサイクリングができて

自転車を買う苦労を経た楽しみは

いまだになくなっている。

自転車のため我らが共に稼いだバイトでのお金は、

もはやこの苦労を味わうことができなくなった、

そんな苦労をする人は時代遅れだと批判される。

そんな思い出をまたやろうと言い出すと、

頭が可笑しいと思われる。

思い出に隠されているままなんだ。


この時代に新しいネットショッピングが盛んでいる。

買いたいものが買いづらく、

コンビニまで足を共に運ぶ思い出は

いまだになくなっている。

我らが共に雨の日に肩を並んで歩いた相合傘の下で、

コンビニで簡単な物を買うためだけに、

互いを温めるためのコーヒーも共に買った。

そんな思い出をまたやろうと言い出すと、

めんどくさいと君に断られる。

思い出に隠されているままなんだ。


子供の気持ちで遊びたいよ。

大人になってもどれだけ身が変わっても、

変わりのない純粋さでいたいよ。


買いたければ努力しようぜと、

楽しくなれるか喜んでもらえるかならまたやろうぜと、

言ってもらいたい。

そんな思い出を蘇らせたいんだ。


だが、

君を懐かしく思うと、

心が痛くなる。

君は息をするが、

僕と純粋な心で遊べる君でなくなった。


世間の痛みと冷たさを感じて、君は

共に世間の冷たさに溶け合ったんだ。


それでも、

僕は君のことを懐かしく思う。


心が常に願っている。

溶け合っていない僕の熱心は

弱火のように燃えている、

氷山の冷たい風に晒されて燃えている。


だからこそなんだ。

君を待つためだけに、

僕は燃え続けるんだ。


そんな日を待ち望む僕は

君を懐かしく思っている。

ずうっと思っている。

だが、それをすると、

心が痛んでいる。


いずれ君に知られるまで、

痛んでいる僕の心は

純粋さで君を待ち望むんだ。

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君を懐かしく思うと、 シンエンさま @shinennsama

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