『乙女と手羽先』



 高校の寮食はたまに妙な物が出た。


 最も不味かったのは「中華風そうめん」なる胡麻ドレをぶっかけた素麺で、アレは流石の私も残した伝説の物体である。


 しかし、美味しくとも女子寮生達が大量に残す物があった。


 手羽先の甘辛煮だ。何故か。


 手掴みで食べなければならないからだ。

 皆、羽先側を箸で摘み、元側にちょっとだけ指を添えて、ほんの一口齧る。

 そして「もうこれ以上は食べれないわ」と残すのだ。


 皆様、十代後半の乙女である。

 人前でベタベタの手羽先を手掴みして、大口を開けて骨にしゃぶりつくのが恥ずかしいのだ。


 大変勿体無い。


 そんな中、恥じらいよりも鶏肉への執着が勝った私だけが、羽先の軟骨まで齧っていた。……残すなら私にくれ。


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