『貴方の本当に行きたい場所をご提案します』(お題:お盆)
旅行代理店の売り文句に惹かれ、案内のまま山奥の村へとやって来た。
相方を亡くしたその夏、私は仕事に忙殺され満足に新盆も迎えてやれなかった。
八月末にやっと休暇を取り、だがする事も無く妙な旅に身を任せている。
今夜は村名物の祭りがあると宿の者が言った。
一風変わった祭りで参加者は皆左前に浴衣を着、決して喋ってはいけないという。
会場には櫓が組まれ、要は時期遅れの盆踊りだ。
手拭いを頭に被り、団扇を片手に二重の輪となり見知らぬ人々と踊る。
空には皓々と満月が光り、照明は櫓の提灯のみ。
くるりと回って内外が入れ替わる。すれ違いざま、ひらりと手拭いが翻る。
私は確かに、恋しい人の横顔を見た。
今宵満月。旧暦七月十五日だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます