第5話 彼らの存在、火の国

火の国、そう呼ばれたこともあったこの国。なのに、もう、その姿はどこにもない。

隣国に攻め滅ぼされ、暴動が多発して、この国は姿を変えた。それでも、俺らは前に進まなければならない。そう、王族が片っ端から殺されて消されたとしても、前に進まなければならない。進んで、自分たちの手で新たな国を作らなければならない。伝説が本当ならば。そう、アマラス将軍は死ぬ前に言った。


「申し上げます。前方3カイルから暴徒100人が突進して来ています。」

「わかった。下がれ。」

「はっ。」


3カイルか。遠いとも近いとも言えない微妙な距離だな。仕方ない。


「全軍に告ぐ。マトが1カイルに近づくまで攻撃するな。繰り返す。1カイルに近づくまで攻撃するな。以上。」


伝説が本当かどうか試してやる。

本当なら来る。偽物なら来ない。

刻々と時間と距離が縮まる。


すると、目の前が一瞬黒くなった。

は?へ?



「俺らを試すとは良い度胸じゃんか、将軍さんよ。」

「藍斗、そんな言い方しちゃ、後で怒られるよ。」

「うるせーよ、ババー」

「まぁ、ひどいわ。」

「いや、二人で掛け合いしてないで、こっちの質問に答えろ。」

「いいわよ。人間様」

「誰?何者?」

「あら、それは知ってたんじゃなくて?そう、私たちは吸血鬼よ。」

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