すれ違った人の幸せなんて願えない

みりん

第1話

すれ違った人の幸せなんて願えない



自然体って、何ですか。


私は自分の好きな格好をして、好きな化粧をして、好きな態度で、好きな生き方で生きてきた。


例えば、最近ナチュラルメイクなんてものが流行っているらしいが、私には全くわからない。顔面に着色料を塗りたくったのが「自然」だと言えるのか。

だから私はそんな胡散臭い化粧、絶対しない。ファンデーションもつけずに、不自然なくらい真っ赤なリップを無造作に唇に引くだけでいい。

それが私を飾った姿。


すれ違った人の幸せなんて願えない。


当事者は基本的に無責任に生きる。

「今朝赤ちゃんを連れたお母さんを見たんだけど、大変そうだった、幸せになって欲しい」

たまにそういう人がいる。

心が綺麗な人が2割くらい、着色料塗りたくった奴らが8割くらい。

自然体を演じるのは滑稽なのに、なんでわからないのだろう。


だいたい、すれ違った人の幸せを願えるくらいなら、この狭い狭い社会で人を恨む必要も無いだろうに。

あいつはうざい、汚い、穢れてる、なんて、すれ違った人の幸せなんかを願える人が思うものなのか。


今朝すれ違った人は、きっとこれから一生会うこともないでしょう。




綺麗な歌に共感なんてできない。


私たちの人生は歌えるほど綺麗じゃない。

だから共感なんてできない。

「あの曲に共感した」というのは、共感ではなくてあくまでも憧れだ。

一夜で対戦国の兵士と友達になって歌なんて歌えない、生まれる前から愛しい人を探すことは出来ない。

汚い歌を反芻して。

汚い歌を愛して、綺麗な歌に焦がれましょう。





あなたが死んでもみんなは悲しまない。


例えばその死が全国ニュースで扱われるのだったら、テレビに出たいあまり、泣き出す人もいるかもしれないけれど。

それが嬉しい、わけがない。

あなたの死をテレビに映るきっかけにされるなんて、死んで尚の侮辱。


朝、学校の椅子に座ってから。

あなたに話しかけてくれる人なんて片手で数えられるはず。

だから、話しかける話題をわざわざ作って、話しかけてくれる人なんて、すごく綺麗な人だ。

だから、その人にだけ悲しまれてください。

その人たちが世界中の71億人分、沢山悲しんでくれる。

逆に、わざわざ話題を見つけてあなたと話している瞬間、世界中の71億人分、喜んでくれている。



だから、生きてください。









今朝、すれ違ったあの人は、きっと私しかわからない悲しい顔をしていた。





すれ違った人の幸せなんて願えない。








だから、せいぜい、勝手に生きて。

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