原石とハニカミ

カゲトモ

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「おつかれさまでーす」

「おつかれさま」

 元気のいい声が勝手口を開いた。今日の斉藤君はいつもより機嫌がよく見える。と言っても彼はいつだって良い子なのだけど。

「すみません、無理言っちゃって」

「いや、大丈夫だよ。もともとこの時間には店に来てるし」

 実は昨日、斉藤君が新作のカクテルを作ってみたいと仕事終わりに言っていたのだ。昨日は来客も多くラストの時間も遅かったから、その新作は今日の開店前に作ってみることにしたのだ。

「すみません、ありがとうございます」

「いやいや、その代り仕込みも手伝ってもらうしね」

「もちろんです!」

 ニッと笑いながらバックへ入った斉藤君。彼の考えたカクテルとはどんなものだろうか。俺はただ、斉藤君が考えた新作、としか知らない。

 とりあえず、一通りの材料は用意したけど、必要なものがあれば買い出しに行かないと。

「お待たせしました。よろしくお願いします」

「うん、それじゃあ始めよっか」

「はい!」

 気持ちが良いくらい元気が良い。若いってのはそれだけでいいことだ。って思うようになったのは、やっぱり歳を取った証拠だな。

「新作のカクテルって、どんなのを考えてるの?」

「えっと、甘くて可愛い」

「甘くて可愛い」

「けど爽やか、みたいな感じです」

「ふんふん」

「今流行のフォトジェニックってわけじゃないですけど、見た目も可愛くてつい写真を撮って誰かに見せたくなるような、そんなカクテルが作れたらいいなって思っていて」

「へぇ、面白そうだね」

「ふふ、上手く作れるといいんですけど」

「それじゃぁとりあえず作ってみようか。材料は足りる? 買い出し必要なら行くけど」

「いえ、大丈夫です。さっきいるものは買って来ました」

「よし、じゃぁやってみよう」

「はいっ!」

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