大人

 小学校1年生の時、まだ身体も小さかった僕は、年上のお兄さんお姉さんである6年生がすごく大人に見えていた。


「僕も、5年後にはあんな風に大人びた人になれるのかな」


 そんな事を考えて、ただ平凡に毎日を過ごしていた。


 けれど、僕が6年生になったところで何も変わりはしなかった。大人に少しは近づいたはずなのに、これと言って変わるものはなかった。その逆で、帰り道にすれ違う中学生に憧れを抱き始めていた。


「中学生って大人びてるなあ」


 小学校を卒業して、憧れの中学生になってみても僕は何も変わりはしなかった。そして、次の憧れの対象は高校生に。そうやって、身の回りの先輩に憧れるだけ憧れて、ただ過ごしているうちに気が付けば30代を過ぎていた。


「年取れば大人になれると思っていたが、俺は大人になれたのか?」


 そう自問自答したところで、解答はやっては来ない。

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