最寄り駅から

 気が付けば、高校を卒業して三年が経過していた。


 ある日、俺は就活で東京に向かう為に、母校のある最寄り駅を久し振りに通過した。高校の卒業式の日以来ということもあり、ガタガタと揺れる乗り心地の悪さに懐かしさを感じていた。


 最寄り駅を通過して直ぐ、未だに何も手の付けられていない広い土地が目に入った。俺が高校に入学した当時、この場所に大きなショッピングモールが出来るという話を聞かされていた。それが出来れば、学校帰りに遊びに寄れる、そう思い楽しみに待っていたのに、二年になっても、三年なっても、終いには卒業式の日になっても、工事車両の一台出入りする事は無かった。


「未だに、何にも出来てないんだ───」


 俺ですら、当時の紺のブレザーから、今では黒のリクルートスーツに変わったというのに、この車両から眺める、この景色だけは何にも変わってやいない。


「次は◯◯、◯◯、お出口は右側です」

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