安い人
その露天商は怪しく笑うと、私にこう言った。
「どうだい、こいつを買う気は無いかい?何、変なもんじゃないさ。こいつは所謂『死』ってやつさ。ガラスの瓶なんかに入ってやがるから分からないと思うが、コルクを抜けば、たちまち『死』が味わえる。どうだい、面白いだろう?何、いくらかって?いい質問だね。こいつは値段が決まってなくてね、あんたが決めてくれていいよ。こいつの価値は、あんたが決めな」
そう言われ、私は鞄から財布を取り出すと、500円玉1枚を露天商に渡した。
「これが、あんたの思うこれの価値かい。まあ、いいだろう。これで、これはあんたのもんだ。好きに使ってやんな」
そう言って、露天商は私に『死』が入った瓶をくれた。
私は堪らず、その場でコルクを抜いた。
「安い人だね───」
露天商は怪しく笑うと、店を畳んだ。
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