第29話束縛!氷結魔法

俺とアスカは完璧に氷の中に閉じ込められた。初めて氷の中に閉じ込められたが、感覚は冷たいというよりも痛いと言った方が正しい。


しかも、指一本も固まって動かない。だが、結局は「魔法」なのである…。


「凍らせてしまった…。団長に怒られる…。どうしよ。」


俺は身体中から魔力を出し、氷に触れさせ、魔力をゼロにした。その刹那、氷はひび割れ、跡形もなく消えた。


「あー寒かった…。凍死するかと思った。」


「本当だわ。急に氷の中に閉じ込めるし…。」


「あれ?氷が溶けちゃった?妖精さん、嘘ついた…。」


無表情で、他人を氷に閉じ込めるなんて、どんなサイコパスだよ。俺はますますルーチェという人間が不気味に感じた。そして、ルーチェはニヤリと笑った。


「もう、容赦しない…。生け捕りにするのやめる。

私の氷とかした。」


ルーチェは右手に氷の刃を作り出し、手に持った。

また、地面は凍りつきスカートリンクの様になった。

しかし、俺は地面に自分の魔力を流し込み、すぐさま氷を消した。


「あれ?また氷が消えちゃった?なんで?なんで?」


ルーチェは首を傾げていた。そして、何か独り言を呟いていた。その瞬間、ルーチェの目の前に氷柱の様な形状をした氷が無数に現れ、俺たちに向けて発射された。


「火属性魔法 炎壁」


すぐさま、氷柱は解け水と化した。その水はアスカの足元へと流れ出た。俺は咄嗟にアスカに飛びついた。


アスカは一瞬何が起こったか理解できていなかった。


溶けた水が一瞬で固まり、氷柱となって俺の脇腹をかすった。脇腹は熱くなり、触ると血がベッタリとついていた。


そして、俺の脇腹から出る血が一瞬で固まり、氷となった。少し動くだけで激痛が走る。

ルーチェの狙いは、液体を瞬時に固めて氷にできる。

少しでも血が出れば固められる…。

俺じゃない限り。俺は脇腹に魔力を流し込み、氷を溶かした。


そして、回復魔法で応急処置を施した。

しかし、応急処置なので、痛みはまだ残る。


「こいつの魔法かなり厄介だな…。」


「ごめん、龍真。私が油断してて…。」


「お前が謝るなんてらしくないぞ。」


「私だって、謝る時は謝るわ。バカにしないでくれる。」


「アスカ、隙を作ってくれるか?」


「出来るわよ。」


「でもその間俺はお前の魔法を調整できない。」


俺がそう言った瞬間、アスカは不安な顔を浮かべていた。それもそのはずだ、俺が調整してなければ大量の魔力が魔法陣に流れ込んでいた。

でも、ある事件がきっかけで使えなくなった訳だから、その前は使えていた。

でも、今はそんなこと考えている場合ではない。


「アスカ、出力最大で魔法を打て、魔法の系統は煙幕系だ。相手に当てなくていい。あった瞬間、煙幕に紛れて、ルーチェの背後を走り込め。」


「分かったわ。どうなっても知らないわよ。」


「覚悟はしてる…。」


「火属性魔法 黒煙」


アスカがそう言うとあたりは真っ黒い煙が立ち上り、俺らを飲み込んだ。思ったよりも黒い煙は規模が大きく、地下街を包み込んだ。


俺は手を教えていたが、想像以上の煙で咳き込んだ。

しかし、もう準備は整えた。勝機は十分だ。


ルーチェは冷たい冷気を流し込み、煙を飛ばした。

目の前には何もせず俺とアスカが立っていた。

厳密にはそこにはいないのだが。


「あれ?今の煙で投げてると思った。」


ルーチェは俺とアスカを氷で串刺しにした…。

しかし、その2人の像はゆらゆらと消え、なくなった。俺はルーチェに向かい背後から魔法を打った。


「火属性魔法 白虎の大火!」


炎を纏った白虎がルーチェに襲いかかった。ルーチェは突然の攻撃で為すすべもなく、倒れた。

俺はルーチェの魔力をゼロにした。


「出力最大とは言ったが、規模が大きすぎるんだが。」


「そんなの知らないわよ。自分の言葉に責任を持ちなさいよ。」


「分かったよ。」


その時、遠くから拍手が聞こえた。そこにいたのは黒髪の男だった。


「おめでとう。Aランク相手にかなり手こずっていたようだが。もう、俺はお前らに用はない。

さっきのそこの彼女との会話は時間稼ぎだ。そろそろだな、国潰しは…。」


そう言った瞬間、地上で轟音が響き渡った。

凄まじい音で耳が痛くなりそうであった。

そして、地下街の至る所で爆発音が鳴り響いた。


天井からは石のかけらのようなものが落ち始め、崩落しそうであった。


「まんまとこっちの時間稼ぎにハマってくれたよ。計画は順調さ。まあ、僕は依頼で来ただけだけど。

依頼主はミリナ、共犯者としてウィリアム。それだけを君に伝えておくよ。」


そう言って颯爽と消えていった。俺はミリナの策にまんまとはめられた訳だ。しかし、ウィリアムがなぜそこまでしてミリナについて行ってるのか分からなかった。


「めんどくさいな。」


「あんた、本当そればっかりね。」


「事実だろ。まあ、でも今回は俺も動く動機があるからな。」


「何?」


「俺をはめたことだ。」


「馬鹿らしい。でも、私もお父さんがした事が事実であったとしても、この国の魔道士として、見過ごせないわ。」


「お前がまた、魔法を打ったらこの国が滅ぶんじゃないのか?」


「今ここであなたに向かって撃っても良いわよ。」


「撃てるもんなら撃ってみろ。」


そう言って俺はアスカの魔力をゼロにした。

案の定アスカは魔法を撃とうとしても魔力が流し込めず、撃てなかった。


「本当、最低。」


「そりゃどうも…。」


そう言って、駆け足で崩れゆく地下街を抜け出した。

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