第21話エルゼとルイ

私とルイは、ケールの酒場へといた。そこに龍真がいることも知っていた。しかし、会えなかった。会える顔が無かった。


別に喧嘩をした訳でもない。会いにくかった。ルイには悪いのは分かっているでも、私の気持ちが乗らなかった。


その間、龍真に気づかれないよう、空いている部屋に入れてもらった。

近くにいるのに、会えないもどかしさがそこにあった。


「ルイは、龍真会いたいよね。」


「そうですね。でも、エルゼさんが会いたくないんだったら、私はそれで良いです。」


私はいつでも良い子なルイの頭を撫でた。そして、ルイの境遇も悟った。主が嫌だと言ったら、それに従う。多分、ルイは私の気持ちを悟ったっていうことではなく、私に従うため言うことを聞いているだけに過ぎないと思う。


2人でベッドにくつろいでいるとドアがノックされた。


「はい。」


「私です。」


その声はケールであった。私が入って良いと言うと、ケールは、何とも言えぬ顔で入ってきた。


「私はあなた達に謝らなければいけない。龍真ちゃんから聞いたんだけど、あなた達もこの国の魔道士達や、魔獣と戦ってくれたって。

なのに、ルイちゃんなんかは、Fランクだからと言って、差別していたわ。

本当に申し訳ない。」


ケールは深々と頭を下げた。龍真が私達のことを言っていたのは、以外であった。その言葉を聞き、私の心はまた揺らいだ。


「本当に龍真ちゃんと会わなくて良いの?」


「今は、気持ちが乗らないと言うか、会う顔がないんです。私の我儘に付き合わせちゃったのかなって。

だから、今は距離を置いた方が良いんじゃないかって。」


「今はそれで良いかもしれないけど、いつかはちゃんと向き合わなきゃね。」


私は頷き、ケールは


「おやすみ」


そう言って、部屋を出た。私は、この後何をするのか考えた。アルテミアの要人が居なくなった。事実を皇帝に報告して、その後どこに逃げたのか調査しなければならない。


でも、調査と言っても二人だけじゃきついものがある。まず、アルトに戻らなければ話が始まらない。

アルト行きの飛行船は正午に出るらしい。


それに乗るしかないか。私は、今後の予定を考えながら、ベッドの上に寝っ転がった。


ケールの言う通り、向き合わなければならないことがいくつもある。龍真だけじゃなく、ルイの事もだ。

これから、行動を共にするわけだから、相手の事もしっかり知らなければならない。


ルイは、部屋の鏡の前で髪の毛を整えていた。


「ルイ、記憶無いって話してたわよね。それっていつくらいから?」


「えーと、全然分からないです。最後に覚えてるのは

道端に倒れてた所を、奴隷商人に引き取られた所までです。何で倒れてたのかもさっぱり分かりません。」


「そうなんだ。」


私はそれくらいしかかける言葉が思いつかなかった。

最近記憶を失ったのか…。

私は、横になっていると眠くなって来たのでそのまま目を閉じた。


目を閉じると、戦闘の場面が頭の中に浮かんだ。足がすくんで動けない自分。前を行くルイと龍真、私は置いていかれるのか…。


その後、意識は完全に落ち、夢の中に誘われた。





窓からの陽の光で私は目を覚ました。隣でルイは静かな寝息を立て、可愛らしい寝顔で寝ていた。

そして、最後に荷物の確認をし、髪の毛を整えた。


準備で物音を立てていたせいか、ルイは目を覚まし、重たそうな瞼を目で擦りながら、立ち上がった。


「おはよう。」


「おはようございます。」


ルイは、いつでも礼儀正しかった。でも、私としてはまあまあ長い時間一緒にいるので流石に砕けて話して欲しいのが願望であったが、ルイがそれでいいなら強要する気は無かった。


「ルイは、準備は出来てる?」


「はい。」


「机にケールさんが作ったサンドウィッチがあるから、たべて」


「分かりました。」


ルイは、美味しそうにサンドウィッチを頬張っていた。私もそのサンドウィッチを、食べた時驚いた。

とんでもなく美味しかった。


中身は、いたってシンプルで、卵とサラダが入っていたのだが、そのサンドウィッチは他のサンドウィッチと違う、温かみのようなものが含まれていた。


ルイがサンドウィッチを食い終わり、全て準備が整うと、ケールに挨拶をしに行った。


ケールは一階のカウンタースペースにいた。


「もう行くの?」


「はい、お世話になりました。」


「お世話になりました!」


「二人もいなくなるのは悲しいけど、頑張って。」


ケールは、私達を暖かく送り出した。とても良い人だあった。最初にあった時は、Fランクのルイを受け入れていなかったが、この事件を機にそれは無くなった。


そして、私の悩みの相談にも乗ってくれた。

親身になって聞いてくれる人と関わるのは初めてで、少し戸惑ったが、とても心が暖かくなった。


「さようなら」


私とルイは頭を下げ、空港へと向かった。

そして、空港にいる金髪の女の職員にチケットを見せ

た。


「大人1人と、子供1人っすねー。」


その後、私とルイは飛行船に搭乗した。

ルイは2回目であったが、飛行船に胸をおどらせ、小走りで中へと入っていった。


前みたいに、ハイジャックなんてなければ良いけど。

そんなことを思いながら、私は座席についた。

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