第4話 色欲の魔女

「まあお前の言う通り俺は異世界から来た。」


俺は、弁解する余地もないのであっさり認めた。


「本当にそうなんだ!」


そういって彼女驚いた顔を浮かべた。俺は彼女の不意に出るしぐさや表情に少し見とれていた。


「ほんとエッチだな君は~。目が私の目じゃなくて下にいってるよ。」


「そんなことは断じてない。」


俺はすまし顔でそういった。話していると遠くからまた、警察のような人の声が聞こえた。彼女はまた厄介そうな顔を浮かべ、俺に身を寄せてきた。

そんな近づかれるとその、あれが当たるのだが・・・。


そして彼女は俺に小声で、


「彼氏のふりしてくれない?」


と言ってフードを被った。俺は無言でうなづいたが、かなり動揺していた。


「分かった。でも俺にもようがある。」


「分かってるわ。買い物かなんかでしょ、付き合ってあげるわ。因みに名前はエルゼよ。」


「俺は、龍真だ。」


「龍真行くわよ」


と言って、俺はエルゼに引っ張られる形で、店へと向かった。

エルゼが突進してきた道のりをまっすぐ行くと、そこには大通りがあり、たくさんの店が並んでいた。


「ここに来れば人がいっぱいいるし、まけるわね。」


「洋服店はどこなんだ?」


「洋服?あなたの服目立つもんね。私もそこまでこの島知らないけど、洋服店の場所くらいは容易いごようだわ。」


そういって、また俺の手を引っ張り、人ごみの中を連れまわした。こいつ元気だなと心底感じた。


そして、商店街にこじゃれた洋服店があったので入ることにした。


「いらっしゃいませ!」


となじみのあるフレーズの言葉が聞こえた。この言葉は異世界共通かと思いながら店に入っていった。


「どんな服をお探しでしょうか?」


「普通の地味な服で結構です。」


「はあ・・・。」


と女店員は苦笑いを浮かべていた。そうだこの反応、学校の同級生の反応だ・・・。

俺は昔のことを振り返り、悲しくなった。


「せっかくなんだし、かっこいい服買っていきなよ~。」


そういうと女店員は、目を輝かせ、エルゼの方に話しかけた。


「彼女さんですか?」


「全然ちが・・・わないですけど」


何だよその反応。だから店員はめんどくさいんだよと思いながら俺は眺めていた。


そして、エルゼは少し動揺し、黒いロングコートをてきとうに指さした。


「なかなかいいですね。」


そして店員はその黒いロングコートを取り、俺の方まで笑顔で近寄ってきた。その笑顔は少し怖かった。


「どうですか彼氏さん?」


「こじゃれている。」


「ですって、彼女さん?」


そして、エルゼは俺の方を上目遣いで見てきた。これは反則だろ・・・。

俺は、エルゼの策略にはまりしぶしぶ承諾した。


「お値段は4900エルクとなります。」


俺はもらった、5000エルクをしぶしぶ店員に渡し、お釣りをもらった。

店員は支払いを終えると、また笑顔で


「試着してはどうですか?」


と言われたので、することにした。俺は店の奥にある試着室に入り、来ていた学ランをぬいだ。下の制服が黒いズボンというものもあり、ロングコートを着ても違和感はなかった。

俺はカーテンを開けるとそこには、エルゼが立っていた。


「似合ってるじゃん。」


と笑顔で言われたので悪い気はしなかった。俺はそのまま着て帰ることにした。

店を出るときも、店員はにこやかな笑みを浮かべていた。


「ありがとさん」


「全然、私もうまく隠れられるし。これから家に帰るの?」


「まあそんなところだが、お前まどうしだろ。」


「そうだけどそれがどうかしたの?」


「魔法を教えてくれ。」


エルゼは少し考えたそぶりを見せ、


「うん、いいよ!」



と快く承諾した。

辺りは、赤い夕陽に染められていた。しかし、大通りにはまだ人ごみがあった。


「場所を変えよっか」


と言い、エルゼは言い誰もいない路地へとどんどん入っていった。俺は何も言わずそのあとを付いていった。

そこは薄暗く、空気も悪かった。


「でも教える前に、うるさいのを片付けなきゃ。もう出てきたら?魔導士さん・・・。」


そういうと、エルゼと俺を囲む用に七人の魔導士が現れた。


「八の枢要罪の【色欲】エルゼ・ユースティティア、この国の極秘データ奪取の疑いで身柄を拘束する。」


俺はその事実を知って驚愕した。枢要罪?八人の魔女、こいつが・・・。


「そいつもお前の仲間だな!」


「断じて違います。」


俺は簡潔に丁寧にしっかりと否定した。


「美少女を守ってやるぜとかはないわけ?」


「俺は中二病は少しこじらせても、目の前に美少女がいたとしても自分の身の方が大事だぜ。」


俺はどや顔をしてそういった。


「あなた、かなりの屑ね。」


「ありがたい誉め言葉だ。」


そして彼女は、ひらめく素振りをみせ、次の行動にとった。


「この人も共犯です。データを盗んだ私をかくまいました。」


「おまっ!」


「二人の身柄を拘束する」


と俺の意見はお構いなしに言った。


「お前も最低野郎だな」


「お互い様ね!」


と言って、エルゼはベロを出して笑った。そして、小声で


「負けるわけないじゃん!」


と無邪気な声で言った。エルゼの周りには巨大な魔方陣が現れ、青く光った。そして、点には星形の文様が入った丸いものが握られていた。


周りの魔導士たちは、手元に小さい魔方陣を作り詠唱していた。


「赤き炎の散弾  ガン・ファイア」


と言ったすると、手元からは何弾もの火球が

飛んできた。


「聖属魔法 ホーリー・ノヴァ」


エルゼは詠唱なしで魔法を撃った。その時、


「目を閉じて!」


と言われた。その瞬間エルゼの周りはまぶしい光で包まれ、火球もろとも吹き飛ばした。

しかし、魔導士たちは平気に立っていた。しかし、様子が変であった。


「愛しのエルゼ様、ご無礼を申し訳ございません。」


「分かったらどこかえ消えて頂戴。」


「分かりました。」


と言って、魔導士たちは消えていった。

エルゼは俺の方を振り向くと頭を抱えていた。


「もしかして、光見ちゃった。」


「ああ。」


「でも変ね・・・。全然変わっていない。」


「俺はもともと変だからな」


エルゼは、その言葉を聞き微笑を浮かべていた。


「でも、私の魔力アビリティ【色欲】は私の魔力が込められた技を受けると、私に好意を抱き言うことを聞くの。」


なんて恐ろしいアビリティだよと思いながら聞いていると、エルゼは目を見開いていた。


「気づかなかったけど、あなたの周りにとても濃くて黒い魔力が漂っているは・・・。もしかしてそれで私の魔力の干渉を防いだ・・・。魔力ランクは何かしら?」


「Sだ・・・。」


「嘘、私と同じ最高位ですって・・・。あなた、私と組みなさい!」


と言われたが、俺の答えは決まっていた。


「無理だ・・・。」


そういって俺はケールの家へと戻っていった。しかし、道が分からない・・・。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る