バル子生きてる、恋してる。

第1話

♡漂流3日め♡

朝起きてすぐ海沿いを歩いていたらステキなモノをみつけたの！

漂着した旅行カバンよ！

他人のものを勝手に使ったり持って帰っちゃいけないのは知ってるわ

だからもちろん「ちょっとコレ使うわよー！」って大声で叫んだし、持ってくっつったってお家に持って帰るわけじゃないもの。すぐそこのほら穴へ運ぶだけだもん。

だから、セーフ＼(^o^)／

いつかアタシにステキな彼氏ができても、過去に横領や窃盗した犯歴があるなんてうしろめたい気持ちを持つこともないわ。セーフなんだもの。

そんな旅行カバンからとんでもないものを見つけちゃったの！占いコーナーが載ってる週刊誌☆

やっぱり青春ズッポシ真っ只中の女子高生としては恋愛運が気になるじゃない？そしたらもーサイコー！！〜おとめ座の女子にはすぐそばに運命の人が…おもいがけない急展開も〜ですって！

もう、それ見てから胸のドキドキが止まらなくって、どうにもできないからこうして日記を書いてるってわけ。

ちなみにこの日記帳とペンも旅行カバンからお借りしたわ。

返してって言われても書いちゃったもんは消せないし、ここにこめられたアタシの気持ちはアタシだけのものだから返せないけどネ。てへ(#^.^#)

でね、心を落ち着かせるために考えてみたの。すぐそばに運命の人が、って言われても、ここ、無人島くさいのよね。フツウに家族と暮らしてフツウに学校通ってフツウに友達とタピオカドリンク飲みながら恋バナしてたアタシが、なんで今、こんなサバイバル生活送ってるのか、を。

ちょっと長くなるけど、記憶とんじゃったとこはムシして、漂流前日から書き出してみるわ。

< 今日のバル子、超ツイてる！ >

<ラッキーアイテム、漂着した旅行カバン >

♡漂流前日♡

アタシの名前は鯖井（さばい）バル子。14さい。

すきな食べもの、肉、マシュマロ。

きらいな食べもの、カレーうどん(服が汚れちゃうから)、とろろ(お肌がかゆくなっちゃうから)。

今の悩み、地味。

将来の夢、ステキな彼氏ができること！！！あたりまえじゃない！14さいの女子が他に夢見ることがあったら逆に聞きたいくらいだわ！オリンピックの金メダル目指してる重量挙げの日本代表のコだって、世間を騒がす天才女流棋士のコだって、実家が新興宗教でも養豚場でも、どんなコもぜんぶステキな彼氏を作るためにがんばってるに決まってる。そのために日々の努力を惜しまないのが女のコなのよ。

でも、アタシは地味。まぁカオは悪くないないと思う。自分で言うのもアレだけどクラスにはアタシよりブスの方が多いもん。でも、地味。もっともっと目立つようにアピールしなきゃ運命の人に見つけてもらえないわ(T-T)

そんなアタシに舞い込んできたのがこの旅行。パパの会社がなんかヤバい取り引きに成功して、豪華客船で世界一周なんていう激ヤバな社員旅行がプレゼントされたの！家族も招待されたからもちろんアタシも参加することにしたわ。だってどこにステキな出会いが待ってるかわからないじゃない！すべては運命の彼氏に出会うためよ♡

出航してすぐ

出航し

ちょっとまってネ

ここまで書いてペンのインクがなくなってきたみたい。

流れ着いたカバンに入ってたペンだもんね、しかたないけどね。たしかカバンに別のペンあったハズ。

よし、オッケー＼(^o^)／

出航してすぐに船は沈没したわ。

船に乗ってね、パパとママに荷物渡して、弟と甲板に出たの。

大きな汽笛が鳴って、見下ろすと港ににたくさんのひとが見送りに来ていて。もしあの中にステキな王子様がいても残念だけどアタシと結ばれることはないわ、どんなにステキな王子様だろうと、ここから見下ろすと下々の民に紛れて、船上のアタシには手を届かせることのできない小っぽけなオトコにしか映らない…えへ、ちょっと調子にのっちゃった(*^_^*)…でも、ホントそう錯覚するくらい感動的な光景だったわ。

船はゆっくりと港を出て、しばらく雲を眺めていたらあっというまに陸地は見えなくなっていて、ふと振り返ると弟とパパとママが写真を撮るから手を振ってーってアタシに向かって言うから、とびきりのキメポーズをきめたところからの記憶がないの。

沈没したんだもん無理もないかー。

で、どうやってここに流れついたかわかんないけど、砂浜に打ち上げられてたのは、アタシだけ。もちろん荷物なんてなかったわひとつも。

波の音がして、目を開けると周りが茜色に染まっていて。

わぁキレイな夕焼け☆

こんなときとなりに彼氏がいて、キレイだよ…え？夕陽じゃないよ、夕陽を見ているバル子だよ…なんて、キャー！！な妄想してたらあっというまに漂流前夜は暮れていったわ。

< 今日のバル子、人生最悪のハプニングに遭った！ひどーい >

< ラッキーカラー、茜色♪ >

♡漂流初日♡

寝相が悪いなんてよく言われるけど、こわい夢見れば体が震えるし、楽しい夢見れば心が弾むじゃない？それと同じで、砂浜に打ち上げられて朝、目が覚めてみると、5メートルくらい丘の椰子の木の下にいたのも、きっと夢のせいよ。おぼえてないけど。

口の周りがしょっぱかったし、お腹も空いてたからラーメンでも食べる夢を見てたのかもね。駅前の人気の台湾ラーメンのお店、いつも5メートルくらい行列できてたから、たぶんそこに並んでる夢かしら。あー、せめて食べ終わるまで目覚めなきゃよかった…とにかく、漂流初日の朝はやたら空腹だったわ。

いくら男性が痩せすぎよりもややぽっちゃりの方が好きって言っても、女子からしたらまるで信じらんないわ。テレビや雑誌のモデルや女優さん、みんなすごい細いのよ！アタシはフツウ。太ってるとは思わないけど、クラスの中にはもっと細いコたくさんいるし、ブスのくせに男子の前でボディライン強調するポーズわざとしてるコもいるから油断できない(>_<)

とりあえず食べるものを探さなきゃって思ったけど、漂流ダイエットだと思えば、こんなチャンスめったにないもんね。なんか体がズキズキ痛むのもあって、夕方まで寝ちゃった(*^_^*)

日記書き始めていきなりだけど、書くことなんにもないわ。

ただ海岸の木の下で倒れてただけ。

<今日のバル子、ダラダラでした >

<ラッキーメニュー、台湾ラーメン>

♡漂流2日め♡

昨日のアタシ、ちょっと反省m(_ _)m

今日はマジメに食べものを探すことにしたの。

漂流2日めって書いてるけど、これ日記帳拾ってから思い出して書いてるから、実際にはいま3日め。つまり昨日のことを書いてマス。

思い返すとこの日、アタシよくがんばったと思う！

カラダが冷えるし、動きにくいからお気に入りだったワンピース(これ以外のお洋服はみんな流されてちゃってるの)のヘソから下と両袖を引きちぎり、作業中に汗が目に入るから引きちぎった布でバンダナを作ったわ。このカッコじゃとても外に出らんないけど、昨日一日、海岸で倒れてても誰も声かけに来た様子ないし、物音もしないからここ無人島っぽい。だったら堂々と部屋着でお外歩けるわね。前から憧れてたのよ部屋着のまま玄関出てもベランダ出ても誰にも見られないような広いおうち。ヤス子の家がクラスでは一番でっかいかな？でもいくらヤス子でも部屋着で庭を歩いてたらお隣さんに見られちゃうし、勝った？ってカンジ☆

だいたいあの狭いニッポンで、見渡す限りのでっかいおうちに住んでるなんて、人里離れた辺境地に家建てるか、パパみたいにヤバい取り引きでドカンと稼ぐしかないわよね…名古屋にはそんな広い土地ないだろうから、そうすると瀬戸くらいに引っ越さなきゃいけないわ、そんなのイヤ。あと、ヤバい取り引きはやんない方がいいと思う。バチが当たって漂流するハメになるから。

考えてたら気分が暗くなりそうだったから

「勝ったー勝ったーヤス子に勝ったー」なんて歌いながら歩いてたらほら穴を見つけたの。

「あったーあったーほら穴あったー」

「ふんふんふんふん、ほら穴入ったらなんか埋まっとるー」

思わず転調しちゃったわ。ほら穴で見つけたのは発泡スチロールのケース。サーティワンでアイスケーキ買うと入れてくれるやつみたいな。一瞬「アイスケーキ⁉︎」って期待しちゃったけど、ケースの横に「井村屋」って書いてあったからガッカリ(T-T)

でもこの島、夜は冷えるくせに昼間すごい日が照るから、アイスだったらとっくに溶けちゃってるわね。その点、真空パックされた肉まんあんまんは開封してみたらほどよくほぐれてて、お腹いっぱいになったわ！ありがとう井村屋♪ふふふんふんふーん♪

あ、でもこれ個人の感想だからね。

マネしちゃだめよ。

埋まってた肉まん食べてお腹壊してもバル子責任もてない。テレビなら右下に「特別な訓練を受けて食べています」って出るレベル。アタシ特別な訓練なんて受けてないけど、ただここが漂流した無人島だったってこと。アレ食べてなかったらいくら漂流ダイエットなんて言ったって死んでたかもしんないし。「死んでも痩せたい！」って言ってたキセノンに言ってやりたい。ホントに死にそうなときってダイエットどころじゃないってことを。あー、キセノンってのは友達の友達の「木瀬野（きせの）さとか」のことね。自分の日記なのにいちいち説明書き込むのは、いつかコレが出版されて、え？あの美人法廷画家ってこんなツライ体験してたの？やばーいめっちゃ応援したくなるー、なんて展開も一応考えたりしてるから。この日記がいつまで続くのかわからないけどネ(^_^;)

なんだかんだで、漂流2日めにして、衣食住が落着したので、もう寝ました。もちろん寝る前にストレッチとかしたわよ！肉まん食べてすぐ寝るなんて女子を放棄したはハシタナイことできないし。

< 今日のバル子、ほめてあげたい！>

< ラッキーソング、「ほら穴ふんふーん」>

♡漂流3日め♡

はい。

で、今日ね。

美人法廷

美人法

またインクなくなった

よーし復活！カバンの中、あとどんだけペンあるのかしら。

興奮してあれこれ書いてたらすっかり日が暮れてたわ。ホント無人島って不便。予約録画もできないし、Wi-Fiつながらないし、日が暮れたら何にも見えないし。

でもバル子、がんばる。

いつかステキな彼氏に出会うまで。

良いオンナでいたいし、死んじゃうくらい感動的な恋愛したいし。だからがんばる。

バル子、生きてる！恋してる！

(助けが来るまで) つづく