無限可能性虚無秘世界 Genesis
ぱーふぇくと
命があることは当たり前じゃないんだよ
《無限の可能性》
この世は無限の可能性で溢れているー
「君は可能性を信じるか?」
例えば、今から君は首相官邸に突撃し
内閣総理大臣を代わってもらうよう要求する
君にできると思うか?
できたとして、内閣総理大臣を代わってもらえるだろうか…
誰もが口を揃えて否定するだろう
「それはできない」…と
嘲笑う者もいるだろう
「頭 大丈夫か?」と馬鹿にする者もいるだろう
しかし、否定した者達は確かな事実があって
否定しているのだろうか
試した者が否定しているのだろうか
いや、違う
誰も試そうとしない 馬鹿げている
その通りだ、その通りなんだ
試したとて何かが変わるとは思えない
皆 可能性を信じないからだ
例えば 先程述べたように
首相官邸に突撃し 内閣総理大臣を代わってもらうよう勧告したとして 代わってもらえる可能性は
何%だろうか…
0.1%かな?もしくは0.01%だろうか
もしかしたらもっと低く0.0000000000001%かもしれない
ここまで確率を出されると 確実に無理だと
感じる人間がほとんどであろう
次は 今から1時間後にこの地球が地球外生命体による襲撃を受ける可能性は何%だろうか?
まるで漫画やゲームの話だと思うだろう…
厨二病に侵されていると笑われるかもしれない
では逆に襲撃を受けない可能性は何%あると思う?
100%であると言いきれるだろうか
人間は 自分の都合の良いように 物事を軽視 もしくは過信している
人間は幾度もその根拠の無い事実を盾に油断している
その結果多くの命を失ってきた
常に考えるのだ
可能性をー
常に感じるのだ
いつもとは違う何かをー
ここー地球は日々油断した人間が生きとし生き
ありのままの自分をさらけ出して過ごす世界
いつ命を落とすかもわからない危険さえも忘れている
命とは生み出すも壊すも簡単だ
いつから人間はこうなってしまったのか
遠く 遠く昔の時を生きた祖先
ネアンデルタール人 ホモ・サピエンス達は
言葉こそ発しなかったが死の危険はどの動物達よりも熟知しているはずだ
彼らは幾度も狩りに出掛け、時には巨大なマンモスと闘うこともある
勇猛果敢に挑んでいくも 儚く死んでいく仲間の姿を
何度も見ている 自然と命の大切さを刻んでいるはずだ
長い長い時の中 祖先達はずっと心に置いてきたから
現代に生きる私達も
「命は大切なもの」と教えられてきた
だから、人を殺めることは極刑に処されることがある
人の命を奪った罪は自らの命を捧げる事で
ようやく許される
もっとも 命を落とすことで命の落とし前が付けられる皮肉な話でもあるが…
「命の大切さ」
「可能性を信じないことの愚かさ」を身に染みて分かる時はいつか来るのだろうか…
これはifストーリー
「命を奪われるのが当たり前」
「可能性を信じないのが当たり前」
な世界の話をしようー
何の変哲もない いつも通りの朝ー
谷岡信司は自らが通う中学校へ登校していた…
「今日もけだるい1日が始まる…」
彼の朝の口癖であった
目の前にはまぁまぁ大きな学校
「私立笠島中学校」だ
生徒数は600人程度 教師を合わせると650人の都会の中学校としては
少人数だが、特に変わった行事はしておらず
校外学習だって普通に町の歴史的建造物の見学
修学旅行は東京の遊園地だ
何らおかしい事も無い普通の中学校だ
唯一つ
ここに通う生徒 働く教師 全てに
「命の保証はない」命・保・証・は・な・い・
ただそれだけだ
ここから600メートルほど離れた市街地に
この学校より高い建物がいくつか建っている
そこからスナイパーライフルで狙撃される
単発の時もあれば連射してくる時もある
昨日は同じ階の教室 2年3組 二宮光太郎 が殺された
その前は3年4組 榊原 雅音 その前はー
名前を挙げ出すとキリがない
「殺されたら人生は終わる」
そんな当たり前のことを今更言う必要があるだろうか
しかしこの中学校の校長はいつも言う
生徒達に常に命の危険があることを示唆している
そうー学校ぐるみで 否 国ぐるみで行われている
命を奪うことは認可されている
「命の大切さを教えるため」という建前で
命を奪っている
人間はよく言う「何かを変えるにはある程度の犠牲が必要だ」と
その論の結果が 命の大切さを教えるために命を奪う
という結論に至った 至ってしまったのだ
何故こんな所に通うのか
学校に行かなければいいだけの話
という考えが浮かぶだろう
入学した生徒は始めはそう思っていた
答えは簡単に出た
まず第1にこの中学校を卒業すると
生活費 食費 高校の学費 その他諸々 すべて支給される
命を大切にすることはお金を手に入れることよりも
大事なこと という信念に基づいて行われている政策だ
次に学校に行かなければいい
それはその通りなのだが…
俺の体験談を少し話そう
俺には幼馴染がいた
名前を楠木 未来と言った 俺を兄のように慕う
可愛い女の子だった…
彼女は三日ほど風邪で学校に顔を出さなくなった
俺は三日目に見舞いに行った
彼女の家に着くと
多くの喪服を着た人が家を出入りしていた
中には泣きじゃくる人もいた
その時の俺は何が起きていたのか分からなかった
中に入るとお坊さんがお経を唱えている
その模様はまさに葬式だった
否 本当に葬式だった…それも楠 未来というお淑やかで誰にも優しく接していた健気な少女の…
俺は訳が分からなくなった
気が狂いそうだった
聞くと 買い物途中に交通事故で亡くなったらしい
最初は交通事故だと思っていた 信じ込まされていた
しかし とある日の校長の一言で考えは覆される
「3日間風邪で休んでおられた 楠 未来 名の通り未来ある少女を失ったことは誠に遺憾に思います…」校長は目に涙を浮かべる
校長自らが生徒 教師を殺す指示をしているのに
いざ生徒が死んだら泣くという どこか矛盾が孕んでいると感じる…
校長は表情を変え 明るく話し始める
「ま、まあ 皆さんもこんな少女みたいな死に方にならないよう充分に気をつけてくださいね 殺されたら人生は終わり ですからね 」
校長のこの言葉から俺は悟った…
未来は校長にー国によって殺されたのだと
恐らく 不登校になったと間違われたのだろう
しかし俺は知っている
未来は本当に風邪だった
未来が休み始める一日前
未来はいつも通り登校しクラスの親しい人 あまり親しくない人 陰気な人 陽気な人 みんなに1人1人
おはよう!と気持ちよく挨拶をする
風邪を引いているような素振りを見せないように
気を使っていた
校長からは元気な生徒に見えたのだろう
風邪を引いているとは微塵も思わなかったのだ
生徒からも教師からも信頼されていた
挨拶を一番最初にしてくるのは俺だったが…
今でもその記憶が蘇る
蘇るたびに思う 何故殺されなければいけなかったのか あんなに清楚でー綺麗でー誰とでも優しく接する
皆の憧れの少女 俺も友達としてではなく
1人の女性として好意を抱いていた
告白しようとも思っていた
風邪が治ったらー思いを告げよう そう心に固く決心していた矢先に訃報が耳に入る
俺は学校に行ってもその9割を保健室で過ごすほど
精神的にダメージを受けていた
だからこそ俺は殺されない
未来に誓ったのだ
歪んだ考えによって命が当たり前のように奪われる
そんな世界が悪いとは思っていない
でも 1番親しかった人が殺されるのは嫌だー
矛盾しているのは分かっている
俺の心の中は常に葛藤されていたー
(1時間目は国語か…)
俺の席は1番左の列の1番前
教師の目に付きやすい場所のため
迂闊に授業中に別のことはできない
するつもりは無いが…
今やってる国語は古文で
松尾芭蕉の旅の話だ
旅で死んでいく人に憧れている芭蕉の詩を読む度に
おかしな気持ちになる
(果たして俺達みたいな死に方を憧れるやつなんているのかな)
いないだろう
誰も望まない
学校でクラスメイトや仲間と共に楽しく学校生活を送りたい
誰もが胸の中に秘める
誰にも言えない密かな願いー
それは儚く平等に破られる機会がある
授業中にも休み時間にもその時は突然訪れるー
チャイムがなり授業中が始まる
「では、教科書を開いてー
皆で音読していきましょう」
先生が読み始める
俺達は目で追う
「故人も多く…」
冒頭部分で先生が読むのを止めた
表情は絶望に溢れ強ばっていた
先生が見ている方向を俺達も見る
皆が教科書を見ている中ーただ一人
顔を机に伏せている人物がいた
名を森山 慎吾 授業は基本寝ている系の男子だ
またいつもの通り寝ているのだろう…
最初はそう思っていた
こめかみから流れる血を見るまでは…
彼は600m離れた所にいる狙撃手によって
頭を撃ち抜かれたのだ
それも静かに…誰も気付くことなく
確実に1人の獲物を仕留めたのだ
殺されると分かっていてもどこか油断してしまう…
その油断が生んだ結果 それが 死
俺達は彼の近くに行き
彼の前で手を合わせる
クラスの全員 先生も含めて
全員が涙を流していた…
俺はこいつとはあまり関わりがなかったが
未来とはよく話す関係で羨ましく思っていた
(未来は 「信司が好き!!」 とクラスに公言していたが…)
いざ 死んでいったクラスメイトを見ると
やはり注意を払う必要がある
クラス全員が思った
結局 死体は 後に来た黒服の男達数名によって
運ばれて行った…
どこに行ったかは分からない
(2時間目は体育)
体育館でバレーだ
体育の中でも球技 特にバレーは苦手だった
憂鬱そうに俺は体操服が入ったバックを取り出し
更衣室へ行こうとすると声をかけてくる少年がいた
「次 体育だな 体育館に行く前に一緒にトイレ 行こーぜ!」
彼は山上 圭介 今年に入って仲良くなった
何だかんだで気が合う友達だ
きっかけはスマホゲームだった
ゲームの良いところ 悪いところも意見が同じだった
こいつの他にここまで気が合う奴はいないだろう
こいつだけは殺されて欲しくない
切実に願うも俺にはどうすることも出来ない
俺は迷う
こいつを生かしておきたい…
こいつだけは死なせたくない…
そう思うと尚更未来の顔が頭に浮かんでくる
俺は表情が曇る 圭介はそんな俺の表情を見てか
明るく声をかけてくれる
「殺された 慎吾の事は残念だ…俺もあまり関わりたくない陰気な奴だったが別に嫌いじゃなかったしさ
生きてる俺らが堂々としてなくちゃ
死んだあいつも 未来も 浮かばれねーよ…」
「そうだよな…」
しばし沈黙
「っと トイレ行こーぜー
早く行かねーと間に合わねーぞー」
「そうだな!」
そう言ってトイレに行ったあと、
俺達は体育館でバレーをする
俺のサーブは基本相手コートに入らない
打っても打ってもネットにHITするだけで終わる
「バレーボールって何でこんなに硬いんだろうな
手が痛くて参っちまうよ」
そう言って俺は横でサーブを打つ圭介を見る
彼のボールは寸分の狂いもなく的確に
相手コートの真ん中にバウンドしていた
(そういや こいつはバレー部だったな…)
体育でバスケをやる時にはバスケ部が
柔道をやる時は柔道部が
サッカーをやる時にはサッカー部が羨ましく感じる
当の俺は陸上部の短距離 しかも走高跳だ
なので長距離走のタイムもあまり良くなく
部活は何一つ体育に活かされない
(何で陸上部に入ったんだろ…)
一応 市内1位 県大会3位の実力があるが…
嬉しく思ったことは一度もない
未来 俺の幼馴染は全国大会の常連だった
俺と未来はいつも部活で喋っていたが
こんな俺が喋っていいのかとたまに思うこともあった
彼女は俺にも優しく接してくれた
俺に好意を持っていたからだ
男の子としての
その時の俺は鈍感だったため少女の恋心に気付くことは無かった
もっと早く気付いていれば殺されることも無かったかもしれない
俺は心のどこかでそんなことを思ってしまう
未来は俺が殺したのではないか と
たまにそれそ・れ・が頭の中によぎった時
俺は喘息と吐き気を催す
人を殺した時と同じ感じに苛まれる
人を殺したことは無いが…
いつもいつもことある事に思い出してしまう
健気で優しかった彼女を…
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