9. ぼくらはさいごのキスをする

「別れてほしいの」


あたしはあなたに告げた。

あなたは驚いたような顔をしたね。


「どうして?」


当然の疑問。

わかっていたから用意していた答えを告げる。


「別に好きな人が出来たの」


嘘だよ。

あなた以外を好きになんてなれやしないの。


「そっか」

「しょうがないね」


あっさりとあなたは言った。

ほら

あなたはあたしを愛してなんかいないじゃない。

これは賭けだったの。

あなたが愛してくれているか。

手離したくないほどに。


「あたしのこと、ちゃんと愛してくれた?」


訊いてはいけないって知ってるけど。


「アイシテイタヨ」


大嘘吐き。

だったらここで引き止めてよ。

縋りついて請うくらいに愛してよ。

あたしはあなたをそれほどまでに愛しているのよ。

もう、過去の事になってしまうのだろうけど。


「ねぇ、キスして?」


最後のキスをちょうだい。

それで本当にさよならしましょう。


あたし達は最後のキスをする。


「さようなら」


あたしはずっとあなたを愛しているわ。

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「キス」で書く9のお題 雪咲花火 @yukisakihanabi

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