第152話 絶対不敗の決闘者 -19
◆
エーデルの身体は限界であった。
傷だらけで外傷は勿論、内部も所々痛めている。感覚なんてもう無いに等しかった。
だけど彼は覚えていた。
先に海に落とされる前の時、拓斗は姿を消したことに。
いや、正確には、視界から消えた、という方が正しい。
だからこのような手段が回避する手段だと考えていた。
そして、この少年がそんな単純なことをするわけがないとも思っていた。
故に、視線を敢えて向けなかった。
そうしたら案の定、蒼い髪の少女が後ろから飛び出してきた。
左腕が下がり右腕が上がった状態で視線を下げていれば、間違いなく反応が自身の右側が空いてしまう。
そこを斬りつけられれば実質無防備になる。
だが、そうならないように見切った。
戦闘的な本能はまだ健在だったようだ。
「――と思っていたぜ」
あまりにも予想通りだったので口に出してしまった。
口の端も自然と上がる。
そしてそのまま、目の前に現れた蒼髪の少女に右拳を――
――と、その時。
彼の視界の左端。
そこに映ったモノがあった。
それは――拓斗の頭だった。
しゃがんだはずの拓斗。
その頭が視界の端に映った。
すなわち、そこまで接近を許しているということでもあった。
ただ、拓斗が攻撃面で脅威にはならないだろうということは頭では分かっていた。
判っていたはずなのに――
彼の身体は行動してしまっていた。
「しまっ……っ!」
反射的に。
エーデルは彼に一番近い所にあった――降ろしていた左腕による裏拳を拓斗に放っていた。
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