第105話 修行・修練・習得 -05

    ◆



「……」


 遥は言葉を失っていた。

 フランシスカの攻撃は、一瞬の迷いも無かった。

 最初から最後までイメージされていたかのような流麗さ。

 しかし、セバスチャンからの指示は「お嬢様が剣、私が盾になればよいのです」というものだけで、具体的なことは何一つない。

 なのにあそこまで真っ直ぐに、『魂鬼』を討伐した。

 フランシスカの未成熟な体であればいくら『スピリ』とはいえ速度もパワーも足りないから自分には到底及ばない――正直、遥はそう思っていた。

 だが実際には、彼女は遥が少々手こずった『魂鬼』を圧倒した。

 手数を増やしたわけではない。

 ただ、急所を的確に、適切なタイミングで打ち込んだだけ。

 澱みなく行っただけ。

 それがどれだけ凄いことかが分からない程、遥は戦闘経験が未熟なわけではなかった。

 そして何よりも特記すべきなのは――

 息が合っている、というレベルを遥かに超えている。

 まるでこの状況になることが既に分かっていて練習したかのような動き。でも自作自演であるとは到底思えない。

 どうやったらその領域に辿り着くのか。

 自分もその領域に辿り着きたい――


「どうかしら、戦闘を覚えたばっかりの未熟な『スピリ』さん?」


 だから遥はドヤ顔で口にしてきた嫌味なんか気にもせず、彼女の眼を真っ直ぐに見ながら口を開いた。



「フランシスカ――」

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