崎山優城(高校生)【5】
五人は連れ立って、プラザにはいってすぐの店にやってきていた。
オクタホテル。――崎山は初めて訪れた店だった。さほど広くもない店内は半分に仕切られており、窓側が喫茶店のスペースになっている。反対側には淡い色合いの洋服やバッグ、雑貨などがずらり。途切れ途切れに聞こえる会話から、どうも大里と宇都さんが母の日のプレゼントを下見したいらしいことはわかる。
大里と宇都さん、霧島さんが先に店の奥に歩いてゆくのに、すこし気後れしながらついてゆく。こういう女性向けの店にはあまり縁がなかったし、あいにくプレゼントできる相手もいない(母の日は特に何をする予定もない)。店の外で待っていようかとも思ったが、それも不自然だ。壁際に展示されているコーヒーメーカーでも気になるふうを演じつつやり過ごそうかと思ったとき、袖をちょんちょんと引かれる感触があった。首をめぐらすと、思ったよりも近くに羽島さんの顔。変な声が出そうになるが、すんでのところで唇をねじり閉じた。
「ね、ちょっと訊きたいんだけどさ」
ささやき声が頬にかかる。
「う、うん?」
「浩一って紗耶香のこと話したりする?」
「え? 宇都さんのこと?」
「そうそう」
唐突な質問に、崎山は眉根を寄せて小さくうなる。
大里とはよく一緒に行動するものの、あまり女の子の話をすることはなかった。誰が好きとか狙ってるとか、そんな会話はしたことがない。せいぜい誰がかわいいとかぐらいで――。そこではたと崎山は気づいた。そういえば、大里が「宇都さんかわいいよなあ」と何気なく言うのを聞いたことがある。
崎山は羽島さんの顔をうかがった。彼女は熱心に、いささか熱心に過ぎる瞳で、大里と宇都さんの二人を見つめている。その口もとは楽しそうにほころんでさえいた。
なんだろう、そもそもどういうことだろう? 崎山の見る限り、大里はこの羽島さんとこそ仲が良かった。それは彼だけではない、同級生の一致した意見だと思っていたのだけれど――美男美女の健全なカップルとして。羽島さんは誰もが認める美人だし、大里も眉目秀麗というほどではなかったが、剣道で汗を流す姿などは、友達ながら精悍なほうだと思う。それに加えて、二人は幼なじみという絶対のアドバンテージ。幼稚園から一緒だというではないか。崎山の基準だと、これで付き合わないほうがおかしいというものだった。
だったのだが、……もしかして勘違いだったのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます