家族写真

@k9k

第3

 「あなた?泣きながら寝てたの?何かあったの?」 「いや別に、 泣く夢でも見たのかな」 「何それ自分の事でしょ?」 そして妻は微笑んだ。 「さあ朝ごはん食べよう」 「あら、珍しく一緒に食べるの?」 「珍しいってなんだよ。 いつも一緒に食べてなかったっけ?」 「よく言うわ。 いつもは寝てるくせに」 正人と花を起こした。 いつも妻がやってくれてる子ども達の面倒も僕がやった。 「あら気がきく。 今日は余裕持って朝ごはん食べれるわね。 何かいいことでもあったの?」

「「 「何もないよ。 ただ春子に任せっきりだったから。 俺もやらなきゃなって」 「いいのよあなたは仕事で疲れてるんだから」 とても幸せな朝だった。 子ども達の面倒を見てるとき、 子ども達が前よりも自分でできる事が増えていたことに気づいた。 子育てしていると自分の子ども達が成長していると実感した。 そうだよな、 正人や花だって大人になるもんな。 涙が出そうになった。 「あっちょう」 オモチャの刀で僕の背中をおもいっきり刺してきた。 「痛った」!びっくりするぐらい痛かった。 まだまだ子どものようだ。 「やめろ! 正人」 「お主強いな」 どこでそんな言葉を覚えたんだ。 「正人、 水戸○門にはまってて」 渋谷!お前そんなんにはまってんの! 年寄りかよ! 「そっ、そうなんだ」 「はーい、 ごはんできたよ」 「ごはんできたって、 食べよう」 家族一緒に食べる朝食はとても美味しく感じた。 それだけで嬉しかった。 僕は仕事に出掛けた。 写真を持って。 僕は写真がどんな意味する事を分かっていた。 いつ起きるかは分からない。 明日か明後日かもしかしたら今日かもしれない。 「おはようございます」 「おはよう」 「もうすぐ混む時間帯だからフライヤーの物多めに作っちゃおうか」

 「分かりました」 「よろしくね」 僕は椅子に座りコンビニの売れ行き具合を見たり、 バイトの時間を組んだりしながら考えた。 仕事を辞めよう。 残り少ない時間を大切にしたい。 僕はあの写真を見ながらそう思った。 「店長、 僕は先に上がりますね。」」

 「あ、 お疲れさま」 「あれ?何見てるんすか?」 「いやー家族の写真をね」 「可愛らしい奥さんじゃないっすか。 子どもは二人もいるんすね」 「そうなんだよ。 自慢の家族なんだ」 「店長写ってないってことは、 写真を撮る役っすね。 優しいっすね店長っすね。 僕も店長みたいな夫に」 「大塚くんここ長いよね?店長やってみない?」 「え!?急にですか?まぁ確かに、 僕は大学卒業して就職もせずここでバイトしてますけど。 僕にできますかね?」 「できるよ。 君はもうこのコンビニを君に任せていいと思ってる」 「店長言われたら断れないですよ。 分かりました。 やってみます」 「ありがとう。 大塚くんそれじゃあ就職手続きを進めるね」 「はい」 僕は、 彼の就職手続きの書類とともに僕の退職願いも一緒に会社に提出した。 僕は最後の仕事を終え家に帰った。 玄関の前に立ち、 僕は一呼吸をおき玄関を開けた。 「ただいまー」 「お帰り、 今日は早いのね」 「長い休暇を貰ったんだ」 妻には最後の嘘になる。 「へー、 珍しあなたが休暇を取るなんて」 「家族といる時間を大切にしたくて」 その時僕の様子がおかしいことに春子は気づいた。 「どうしたの?朝から様子がおかしいわよ?」 「大丈夫だよ。 本当に大切にしたいだけだし。正人や花が可愛いのは今のうちだと思っただけなんだ。 子どもは成長するのが早い。 ただそれだけだよ。」 「そうなの?じゃあごはんにしましょう」 「ああ!」 僕は子どもの面倒を見ながら夕飯を待った。 久しぶりに家族一緒に夕飯を食べた。 妻が作ったごはんがこんなに美味しく感じたのは初めてだ。 なんか寂しく感じた。 涙が出そうになった。 「必殺、 最強切り」 「痛った!」 僕の手をフォークで刺してきた。 めちゃめちゃ痛かった。 「ほら正人、 食事中に遊ばない」 「お主何様」 「何様って」 感動を邪魔するのはいつも正人のようだ。 その後も家族一緒に話をした。 正人は好きな子がいると初めて知った。 正人は恥ずかしいのか 「ちげーし」 と言っていた。 花は将来お花屋さんで仕事したいと妻から聞いた。 名前が花だからかな?すでに花は将来の夢があるのか。 立派だな。 気づいたら花も正人も眠っていた。 もうこんな時間か。 時間が過ぎるのは早いな。 子どもたちを布団に寝かしつけた後、 妻と一緒に話をした。 「あら泣いてるの?」 「へ?」 気づいたら泣いていた。 「やっぱり何かあったんでしょ?ねぇ話して、 大丈夫だから」 僕は写真の話をした。 妻は僕をそっと抱き締めた。 「大丈夫、 朝起きたら夢で終わってる。 」 涙が止まらなかった。 涙が雨のように落ちていった。 僕はそのまま寝てしまった。 朝起きると下で話し声が聞こえた。 まだ、 まだ妻と子ども達がいる。 そう思い下に降りていった。 「あら勇治おはよう」 「おはよう」 そこには僕の母と父がいた。 僕は泣かなかった。 寂しくなかった。 家族とやれることはもうやったから、 だから泣かなかった。 「おはよう」 「勇治顔洗って来なさい」 「はーい」 なんかこの感じ懐かしいな。 僕は朝食を食べ、 着替えた。 仕事に行こうとした。 「おい勇治どこ行くつもりだ?」 そうだ。 仕事辞めたんだった。 「あれ?俺何してんだ」 僕は笑ってごまかした。 父と母の話を聞いてると僕は父が経営しているラーメン屋で働いているらしい。 家族経営というやつだ。 僕はどんな仕事をするかわからず。 親に 「これってどうするの?」 と聞いて、働いた。 親はびっくりしていたが僕は忘れたと言ってごまかした。 それからというものコンビニの店長をしていたせいか身の回りの物に敏感でお客さんに 「気がきくね兄ちゃん」 「いえいえ」 親にはお前がこの店を継いでくれと言われた。 また店長の仕事をするのかな? しかし、 僕がこの店を継ぐのが嫌な理由があった。 それはあいつらだ。 「桝谷が作るラーメンうめぇなー」 「おいお前また太るぞ」 「こここ、

こっこれは新革命のおおっおい、 美味しさですね」 あの3人をどうにかしたい。 「いつまでいんだよ」 「朝昼晩ここでラーメンを食べるまで」 「バカじゃねぇのお前ら体壊すぞ」 「ハハハっ、 私は」 「あのーお客様がメリケンサックを持ってる人がいて怖いそうなので」 「え!?ちょうどいいところだったのに、 ってかメリケンサックじゃねぇよ。 指輪、指輪だから」 「いいから外せよ!」 そんな毎日が続いた。 もう写真も来なくなった。 そんなある日、 母が僕に 「これあなたの写真?」 1枚の写真を渡してきた。 まさかまた! 受けとると、 僕の家族の中で僕以外が写った写真だった。 「これどこで?」  「あなたの部屋の引き出しからあなたの?」 「うん、 僕の」 「誰?この子?」 「母さんには関係ないよ」 春子は今幸せだろうか。僕はもっと家族のために何かをやってやりたかった。 家族の事を思うといてもたって入れなかった。 「おい、 何ぼっとしてんだよ」 「しっかりものの桝谷が珍しいな」 「ししっしし、 死ぬなよ」 「お前らがな、 そういえば大田、 高校の虹島春子って覚えてるか?」 「ん?あーお前が好きだった。」 そこは変わってないのか。 「えっどんな子?」 「そうだな。 超絶美女かな」 「え!?桝谷が!?超絶美女と?」 「うるせぇよ、 虹島さんは今どうしてるか知ってる?」 「あっあ、 そうだな」 

 今はシングルマザーで二人の子どもを育ててるらしい。 夫は亡くなったそうだ。 事故死らしい。 それでも 「そんなん聞いてどうすんだ?あの子の事を狙ってんのか?」 「ち、 ちげーし」 「何向きになってんだよ」 「桝谷が結婚?…ないない」 「やめろよ! みんなして」 「あっそうだ。 住所知ってるけど聞く?」 本当は知りたかったけど聞くのをやめた。 あの時の記憶が、 妻にあったら不幸になる気がして。 それから数日後がたった。 僕はずっと家族の事を考えていた。 大田達は、僕の様子がおかしいと思い。 僕を温泉旅行に連れてってくれた。

あいつらがあんなことしてくれるなんてな。変わってるようです昔と変わってないのかもな。 その温泉旅行で僕は家族が、 春子、正人、 花が幸せであることを願って、 お参りして、 僕もなんだかんだ幸せだな。 その帰りの電車の中で僕は寝てしまった。ふっと懐かしい香りで目が覚めた。 あれ?なんだっけ?なんかこの風景見たことあるような。 デジャヴだ。 肩に誰かの頭が乗っかった気がした。 ん?横を見た。 そこには、 春子がいた。 「あっ!すみません」 また、 同じ再開の仕方をした。 春子が電車の駅で降りようとした時、 僕は 「春子さん?春子さんだよね。 」 春子は振り返った。 「はい」 僕は春子の顔を見て、 微笑んだ。

 

 家族がずっと幸せでありますように。 

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