家族写真

@k9k

第2

 それから何も起こらず数日がたったある夜の事だった。 妻の元に電話がかかってきた。 妻は電話越しで、 手を口に当て涙ぐんでいた。僕は何かあったのかと思い、 あの写真を取り出した。 多分、 僕の予感が当たっているとしたらこの写真がヒントだ。 僕は妻の元に駆け寄り、 妻をソファーに座らした。 その後、 妻は携帯を耳元から静かに下ろした。 「大丈夫?何があったの?」 妻は大粒の涙を瞳からこぼして言った。 「南ちゃんが自殺したらしいの」 「何だって!」 僕は驚きが隠せなかった。 「どうしたの?パパ?」 あまりの大声で子ども達が起きてしまった。 「あーパパお母さん泣かした」 「いや泣かしてないよ。 ほら花、 寝てきなさい。 正人も」 「はーい」 子ども達を寝かしつけた後も妻は放心状態だった。 無理もない。 とても仲が良い友達だったのに自殺だなんて。  

 東村南、 妻の高校時代の友人で、 南ちゃんのことは妻から聞いた事があるし、 高校の時は南ちゃんと妻はよく一緒遊んでいたのを覚えている。 なぜそんなことを知っているか。 それは僕も妻と同じ高校だったからだ。 ついでに僕と妻の話もしよう。 

 僕が高校3年の時に春子と同じクラスになった。 僕は春子を見た瞬間天使が降りてきたのかと思った。 一目惚れをしたのだ。 しかし大田には 「お前にはレベルが高い」 と諦めるように言われていた。 春子の周りにはイケメンばかりたかっていた。 しかし僕は春子の事を諦められず、 下校中に話しかけてみる事にした。 僕は爆発するぐらい緊張していた。 告白するわけでもないのに、 僕は話しかけるシミュレーションをしまくった。 「春子さん同じクラスの桝谷だけど一緒に帰らない」 (シミュレーション)話しかけるだけでいい、 振り向いてくれるだけでいい。 その後、 キモって言われてもいい。 うざと思われてもいい。 春子が春子が僕の頭を埋め尽くす。 僕は春子の事だけを見てしまい周りが何も見えなくなっていた。 僕は春子の元に走り向かって行った。  「はるっ」 「ぼっーん、 ききー」 「ん?」 「春子どうした?」 「私の名前を誰か呼んだ気がして」 「えー?誰もいないよ?気のせいだよ」 「んーそうだね」 少し離れた場所で僕は車にひかれた。 「おい! 兄ちゃん大丈夫かい! おい!」 「うっうーガク」 僕はその事故で全治半年と言われた。 学校に行けるようになるまで大田がよく見舞いに来てくれた。 「お前どうした?信号無視なんて」 「て、 天使、天使に近づきたかった」 「お前はまだあの子の事を?陰キャなお前じゃあ振り向かないよ」 「別にいいんだ。 話しかけるだけでもよかったなのに、 なぜ神は、 神はどうして。 ひどい、 ひどい酷すぎるーうっふっふうわーん泣」 「はいはい、 もう泣くな。 他に女何てたくさんいる」 そうやって僕を慰めてくれた。 結局、 春子には話しかけられずに片想いのまま高校を卒業した。 それから7年がたって、 同窓会に呼ばれた。 僕はその頃、 コンビニの店長になったばかりで忙しく行く気はなかった。 しかし、 大田が無理矢理誘ってきて仕方なく行った。 今思うといいやつだよな大田、 今は変わってしまったけど。 その同窓会で7年ぶりに春子にあった。 高校よりも女性らしくなっていた。 やっぱり今でも "好きだ"って分かった。 みんなは二次会で盛り上がってたが僕は明日も仕事があったので帰ることにした。 僕は帰りの電車の中で寝てしまった。 春子の事を考えすぎたのか夢の中で春子を追いかけ、 車に引かれて目が覚めた。 春子の臭いがした。 俺ヤバイなストーカーじゃねぇか。 キモくね俺? と思い横を見た。 「…」 オーマイガーー! 横には春子寝ていた。 あれ?春子さんがいたよね?今横に…マジ?マジだよね。 夢落ちじゃないよね。 すると、 電車が止まって僕の肩に頭がのかった。 僕は体が燃えるかと思った心拍数も上がるのが分かる。 あっ! 死んだのかなー。 ここ天国かなー。もう僕は死んでもいいと思えるくらい嬉しかった。 すると、 「あっ! すみません」 「え?」

僕はとっさの事で話すことができなかった。それからというもの何もなく。 このまま帰ると思った。 しかし、 春子が駅で降りようとした時、 僕は操られてるかのように 「春子さん?」 何やってんだ。 「え?誰ですか?」 僕の事覚えてないじゃん。 「春子さんですよね?僕春子さんと同じクラスメイトだった桝谷です。 って覚えてないですよね」 バカ止めろ 「まぁ、 覚えてはないですけど、 どうしたんですか?」 ほら怖がってる 「いやー、 高校の頃を思い出してたら春子さんを見かけて、 春子さん二次会に行かないんですか?」 「いや、 私あーゆうの苦手で」 「そうなんですか?私も苦手で」 嘘だろ。 明日は仕事で朝早いんだろ。 「これからきっ、 」 おい止めてくれ 「喫茶店でもどうですか?」 この時の僕は僕じゃないような気がした。 春子は少し微笑んで 「はい、 いいですよ。」 その日僕と春子は昔の思い出や友人の話をした。 その時に南ちゃんの事を知った。 「よく一緒に帰ってる子が南ちゃん?」 「そうそう、 大田くんのことも覚えてなかったなー。 私って忘れっぽいのかな?」 いや僕達は存在感がない陰キャのせいなだけなんだけどね。 それからちょこちょこ会うようになり、  「春子さん結婚してください」 「はいって言うに決まってんじゃん」 僕は嬉しく、 大声で 「やったー!」 道中で叫んでしまった。すると家の明かりがつき窓があいた。 「うるせーよ。 警察呼ぶぞ」 「はっ、 す、 すみませんでした」 「ハハハ笑笑、 本当に面白いね」 「いや、 僕の夢がかなって嬉しかったから」 そして今がある。

 南ちゃんの葬式に妻だけが呼ばれたが僕もいくことにした。 僕は、 写真を手に持ち写真の意味を理解した。 妻は高校の制服を着ているので高校時代の人がかかわっている。 それが南ちゃんか。 僕の時と同じだ。 そして、 春子が泣いている。 悲しいことだったのか。 それに崖後ろに海。 おそらくそこで南ちゃんが自殺した。 なんでもっと早く気づかなかったんだ。 春子は大泣きしながら南ちゃんを見送った。 この写真現像は危険だ。 なぜこんなことが起きたのか。 何か原因があるはずだ。その後も家に帰る途中写真の事を考えた。また写真がどこかにあるのでは?俺の時の写真現像もそうだった。 帰ってきたら新たな写真を足下でみつけたからおそらくまた写真が。 次被害を受けるのは誰なのか?息子か娘か想像したら怖くなってきた。そういう事を考えながら家に帰った。   家につくと、 ショックを受けた妻を寝かした。 僕もそろそろ寝ようかな。 ふっとまた写真が頭によぎる。 僕は悪いこともあれば良いこともある写真もあるかもしれない。 さて歯磨きして寝よう。 その日は写真を見つけなかった。 次の日、 朝起きると妻が先に写真を見つけていた。 「ちょっとあなた見て」 見ると正人が写っていた。ま、 正人?次は正人。 正人は野球ボールを投げていた。 投げた先には花がいた。やめろ! 止めてくれ! 「なんだこの写真」 「こんな写真撮った覚えがないわよね」 「くっそ、こんな写真捨てとけ」 「どうしたの?あなた、らしくないじゃない」 「そんなことないよ」 僕が阻止してやる。 「えっ?捨てちゃうの?」 「ああ、 捨てといてくれ」 その写真を妻に捨てさせた。 それからというもの息子、娘が心配で仕事に集中できずにいた。 一応、 妻には子ども達の事を目を離すなとは言った。 「店長?店長ー」 「うん?何?」 「どうしたんすか?最近、 店長様子がおかしいっすよ」 「ちょっと考え事しててね」 「そうなんすか。 店長大変っすもんね」 「そうなんだよねー」 そして、 仕事が終わると急いで帰った。 それが数日がたち数週間がたった。 おかしいなぁ。 何も起こらない。 妻には 「結局何も起こらないじゃん。 あなたの思い過ごしじゃない?」 妻は信じていない。 するとある日、 服のポケットから新たな写真を見つけた。 どうしてだ。 知らないうちに防いでたのか?そうだ写真。捨てたんだっけ?ん?待てよ?捨てたから何も起こらなかったんじゃないか?僕は昔から勘がよく当たっていた。 多分そうだ。 今度から捨ててしまえば回避ができる! 見つけた写真は僕が写っていた。 僕が歪んで写った写真だった。 なんだ?気味が悪いな。 どういう意味かは分からなかった。 僕は考えもせず燃やして捨てた。 その日を境にこの写真の恐ろしさを本当に知ることになった。  

 次の日、 朝起きると僕は写真を握っていた。 それを見たとき鳥肌がたった。 誰も写っていなかった。 その代わりに妻の名前が刻まれた綺麗な石があった。 僕はその写真の意味をすぐに理解した。 僕は呆然としたがすぐに正気に戻った。 すぐに捨てればいい。 そんな風に思いながらライターで写真を燃やした。 僕は燃えてる写真を見ながら、 子ども達の時は捨てた後も数週間、 新しい写真はこなかった。しかし、 今回は捨てた次の日に…しかも最初っから僕の手がつかんでいた。 ま、 まさかな。 嫌な予感がした。 皮肉にも僕の勘は良く当たる。 その日の夜仕事を終え帰ってくると郵便物の中に妙な封があった。 その中に写真1枚入っていた。 それを目にした時、 僕は目を疑った。 朝見た写真に子ども達の名前も刻まれていた。 なんなんだ! 俺が何したってんだ。 俺はどうなってもいいよ。 けど家族は俺の家族だけは! こんな残酷な事はない! 「この野郎」 僕は写真をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。 そして振り替えるとそこには写真があった。 僕は涙が溢れてしょうがなかった。 それは僕の家族の中で僕の名前だけが刻まれていない写真が。 そう、 さっきと同じ写真がそこにはあった。 「もう止めてくれ」 泣き崩れた。 気が狂いそうだった。 僕は願った。 僕の家族を悲しませるな。 不幸にするな。 その代わり僕が受ける。 だから、 春子や正人、 花にはもう。 すると写真を捨て振り替えると写真は無かった。 僕はほっとした。 力が抜けそのままあお向けに寝そべった。 何も考えずに天井をひたすら見ていた。 きずいたら寝てしまっていた。 はっ! 寝ちゃった!時計を見たら朝方の4時だった。 3時間寝ていたのか。 妻のもとに行こうと立ち上がった瞬間、 横に何かがある。 恐る恐る横を見た。 やはり写真だった。 だが僕は安心した。 なぜならその写真は僕の家族の中で僕以外が写った写真だったからだ。 僕は写真には手をつけづにベットに向かい妻の横で泣いた。 

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