三十路男、夢の異世界生活
七輪
第1話 プロローグ
今日が20代最後の日、日付が変われば三十路...
普通のサラリーマンでアニメ好き、彼女ももう何年いないだろ、
考えるのも面倒臭くなっている。
誕生日を一緒に過ごす相手もいなく今更、親に祝ってもらうのも
ありえない。
今日は週末の金曜日、普通なら仕事終わりに飲みに行ったり、何か
予定が入っていても良いのだが予定は無い。
「コンビニで、ビール買って帰るか...」と心の中で帰路に着く事を決める。
いつの間にかビール片手にアニメを観るのが週間になり唯一の楽しみになっている。
寝る前にも週間になっている事があり、最近は異世界転生モノにハマっていて眠りに就くまでの間、自分が異世界に転生した妄想をして転生した夢でも見れればと、周りから見れば結構痛い感じになってきているが、
「まっ...自分の好きな事をやってるし、誰にも迷惑は掛けていないからいいではないか...」と自分に言い聞かせている。
いつもの帰り道、商店街も閉まっている時間でもあり、一人歩いていると店と店の間の路地からかすかに明かりが漏れているのを見つける。
「こんな所に店あったかな...」
ふとした興味で路地を覗くと奥に明かりがついた一件の店を見つける。
路地に入り店の前に着くと、「BAR 異世界の扉」と書いてある看板があった。
「異世界の扉って...度数の高い酒でも置いてあるのか」
数分悩み、夜の予定もない家の近くだから歩いて帰るのに問題はないたまには外で飲むのも悪くないと思い店のドアを開ける。
「カラン」とドアについていた鈴がなる。
「いらっしゃませ、空いているお席へどうぞ」と初老のバーテンダーが自分を迎え入れた。
「ご注文は?」
「とりあえずビールで...」
中はカウンターのみの小さな店でゆったりとした落ち着いた感じの店であった。
「お待たせいたしました」とビールが届く。
「ゴクゴクゴク」と喉音を鳴らしながら一気飲み干した。
「美味い」と初老のバーテンダーに声を掛ける。
「ありがとうございます。お次はいかがなさいますか?」と言われ
「もう一杯同じもので」
「かしこまりました」
「ゴクゴクゴク」とまた喉音を鳴らし飲み干す。
3、4杯飲み終えたあと店の棚に並んでいる酒ビンを見渡すと、一本の青い一升瓶に目がいった。
「すいません、その青いビンの物は日本酒ですか?」と初老のバーテンダーに尋ねる。
「日本酒でございます。当店オリジナルの異世界の扉でございます」
「ここでも、異世界の扉って...」と心の中で思ったが、興味が沸き注文した。
グラスに注がれる日本酒を見るとかすかに青みの掛った珍し色の日本酒だった。
「この日本酒はとても珍しものでして、当店でしか飲む事の出来ないもです」
「ゴクっ」と唾液を飲み込む。
グラスを口に近づけると、とても香が良く味も今まで飲んだものの中で一番と言って過言はないものだった。
その後も異世界の扉の飲み続け、いつの間にかカウンターで睡魔に襲われ眠ってしまう。
三十路男、夢の異世界生活 七輪 @akijun
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