まほじょッ! ~魔法少女は気楽な稼業……なワケあるかッ!~
嵐山之鬼子(KCA)
【その1】
あるところに、とても子供っぽい……もとい、とても純真な心の少女がいました。
少女は、ある時、疲れきって倒れていた妖精さんを拾います。
少女のおかげで元気を取り戻した妖精さんは、お礼をしたいと言いました。
そこで、少女が望んだのは……。
「うーうーうー」
「ん? どうした、キャロル? 何か不満そうだな。
せっかく
『ねんがんの”まほうしょうじょ”になれたぞー!』
状態なのに」
先ほどからサイレンの如くうなっている幼馴染の少女(正直、ちょっとウザい)に、仕方なく声をかける。
「それは確かに嬉しいけど……どうして、オマケで変身したアルピナスくんの方が、スタイルいいのっ!?」
──知らんがな。
そもそも、よもや忘れてないとは思うが、俺は本来男だぞ!
なのに、お前さんが助けた翠髪の妖精さん(笑)に「わたし、魔法少女になりたいです!」なんて女子中学生にあるまじき願い事をしたばっかりに、そばにいた幼馴染の俺まで……
「魔法少女にはライバルにして後に仲間になる存在が必要よね♪」
……なんて、フザケた理由で変身させられちゃったんだからな。
幸い、変身を解けば元の男の姿に戻れるのが救いだけど。
「ライバルキャラのほうが美人でナイスバディなのが、この業界のお約束だからじゃね?」
もしくは、元の姿の身長差や体型をそのまま反映してるからだと思うが、ちんちくりんでペチャパイなのを気にしてるキャロルにそれを言うのは酷だろう。
「それから、この姿の時は俺を「アルピナス」って呼ぶなって……コホン! わたくしは、華麗なる
実はこの姿だと、強く意識しないと、こういうタカビーお嬢口調でしゃべっちゃうんだよねー。
「う~、それを言ったら、わたしは
実際、こんなチビっこいのに、キャロル=サンの魔法少女としての
魔法(魔砲?)弾を使った遠距離戦も、竜の加護を受けて強化された身体による近接戦(て言うか足を止めてのガチの殴り合い)もお手の物。オマケに聖なる力による浄化魔法に加えて、聖竜召喚なんて切り札まで隠し持っている。
完全後衛型で、各種幻獣を召喚しないと殆ど何もできない(や、さすがに飛行や結界構築くらいは可能だけど)召喚士の俺とはエラい違いだ。
「えっと……ドラゴニック・バースト!」
「きゃ、キャロラインさん! 街中でそんな広範囲攻撃魔法、使うんじゃありません!!」
「あ……てへ、ゴメンね、アルピーノちゃん」
──ただし、それだけの能力を使いこなしてるとは到底言えないけどな。
これまたお約束と言うべきか、魔法少女になった俺達は、「影の世界から来る魔物」との戦いを、「永遠の17歳☆リンドーちゃん」とか言う例の妖精(?)から任されてるんだけど……。
正直、街の建物の被害の3割くらいは、敵の攻撃じゃなくて、キャロラインの魔法の流れ弾や誤爆が原因じゃないかと思う。
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