探偵は昼寝を欠かさない

茜色蒲公英

第0話 プロローグ


向かい合っているソファー、社長が座るように偉そうな椅子と机、小説と漫画が並ぶ本棚、ゲームをするために買った大型のテレビ。いつでも料理ができるようにわざわざ改築した台所。

ここは私、佐藤紗耶が東京のワケありビルの二階を親の金で買い取り、改造しまくった探偵事務所兼自宅である。

東京に事務所を構えてはや半年、仕事の依頼は意外とくるもので今までで数十件くらいは請け負ったと思う。正確な数はうちの助手であり、私のお世話役であり、ここの経営を任せている淵村堅司が知っている。やつは私が探偵業を始める前、助手が欲しかったのだが、私にはあまり友達がいなかったのでやつに声をかけたら喜んでなってくれた。

さて、もうすぐ九時になるのだがやつはまだ来ないのか…いつも九時前には来てくれと言っているのに…

「おはようございます!」

勢いよく事務所のドアを開け入ってきたのがその堅司である。

私より一つ年上の二十一歳。だが敬語なのは高校時代に運動部(何部かは忘れた)をやっていた名残らしい。

それにしてもこんな朝っぱらからうるさい。

「おはよう、あとうるさい。それとピザトーストお願い」

「ピザトーストですね、了解です。十時頃依頼者の方が来るそうなので準備しておいてくださいね」

「十時から?んじゃ着替えとか用意しておいて」

ソファーでダラダラしながらピザトーストができるのを待っているとつけていたテレビでおとといもやっていたニュースがやっていた。

何やら最近殺人事件が多いらしい。しかも犯人は直ぐに捕まっている。

「犯人も阿呆よね、きっかけが小さいのに地獄に送られるようなことやってて。堅司もそう思わない?」

「そうですねー、ですが犯人は俺たちにとっては小さなきっかけや出来事でも大きく捉えているんでしょうね、そうでもなきゃ殺しなんてしないでしょう。はいコレ、着替えです」

むっ、堅司のくせに私に対抗とは。それにここで着替えろというのか。

だが確かにそうかもしれない。この前殺人事件に初めて関わったがそれはもう酷かった。

死体を見たその場で吐いちゃったもん。

そして依頼人の笹塚次郎警刑部に怒られた。

笹塚刑部は捜査一課の人であり、それなりに偉いらしい。妻子持ちで今年で中学生になった双子の娘さんがいる。

写真は無理やり見せてもらった…が。

正直四十七のおっさんの血が繋がっているとは思えないほど可愛かった。

さて、ピザトーストが出来上がったのかいい匂いがする。

「できましたよ、コーヒーはどうしますか?」

「ブラックでいい、でもミルクは入れてね」

「了解です。少し待っててくださいね。」

こうして優雅な朝食をしている私。気分はどこかのご令嬢である。

トーストを食べ終わり、コーヒーを飲み干すともう九時半。そろそろ準備をしなければいけないのだが堅司はのんきに皿を洗っている。

私は着替えるために別室に行き仕事の服に着替え、着ていた服は堅司が片付けてくれるのでその場に置いておく。

今日もこの堅苦しい服を着て仕事をやりますか!


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