隠れ場探し②

「おきまりは、霊脈地と呼ばれる場所だ。水脈のように、世界には霊脈と呼ばれる地脈が流れている。そのライン上のどこかに、魔は本能的に潜みやすい」

「じゃあそこを探せば――」

「あぁ。だが、政府がそれを見過ごしているとは思えない」


 口を開きかけた美紅に、剣聖が静かに告げる。


「奴らが探す場所を、俺らも探す必要はないだろう。そこにいるとすれば、奴らに任せておけばいい。問題は、そこにいない場合もあるということだ。霊脈上に必ず潜んでいる訳でもないから、そこばかり探していては取り逃がす可能性も高い。普通なら目のつけない場所、そこを今は差がすべきだろう」

「普通なら探さない場所、か。でもそれでいて、魔のいそうな場所なんだろう? 結構難易度高くないか?」

「あぁ。だから、知恵を借りるためにお前たちも呼んだんだ」


 剣聖が何気なく言うと、それを聞いて美紅と燎太は密かに驚く。

 まさか、剣聖から頼りにされる時が来るとは思っていなかったからだ。

 どう見ても一匹狼気質な剣聖が、専門家以外の自分たちに声を掛けてまで頼むというのは考えにくいことだった。

 もっともそれは誤解で、彼は何が何でも魔を討伐するために手段を選ばないだけ――というのが、実際の彼の性格なのではあるが。

 そのことをまだ正確に把握していない二人は、しかし嬉しさを覚える。

 同時に、やる気を覚えた。


「そういうことなら。退魔士連中の常識にはない場所を、あえて挙げて行けばいいんだな?」

「あぁそうだ。そういう視点が欲しいんだ」

「じゃあ、ベタかもしれないけど、昔からいわくつきの場所はどうだ? 何か、魔というか、お化けが潜んでいるとかで有名な場所とか?」

「……すまん。どういう意味だ?」


 怪訝な顔で剣聖が顔を上げると、それに晶たちはむしろ驚いた。

 いわくつき、という言葉が関する場所の意味が、分からないらしい。


「あ、いや。要するに、心霊スポットとかはどうだって話だが……」

「心霊スポット……」


 言葉を復唱し、剣聖は晶を見る。

 その言葉に、晶はやや顔を強張らせるが、顎を引く。


「確かに、ありえるかも。霊脈上以外でいえば、そういう場所に、特異的に魔が潜むこともあるんじゃないかな?」

『えぇ。その通りでいい着眼点です。そういった場所には、稀ではありますが、霊脈とは別に魔を引き寄せることもあります』

『人目を忍ぶ、という意味でも適しているからな。潜むにはもってこいだ』


 晶に続き、スヴァンと頼重が同意する。

 少し通俗的な考え方ではあるが、それが却っていいヒントになった。

 現地におけるそう言う場所ならば、政府も見落としている可能性が高い。


「なるほど。じゃあ、具体的にどこか教えてもらえるか?」

「そうねぇ。一番有名なのは……この辺りの――」

「そこ、霊脈に被っているよ? 政府も探すんじゃないかな?」

「じゃあ、こっちは? ここも有名だぞ?」


 地図を覗きこみ、指差しながら、剣聖たち四人は話し合いを進める。

 言葉を交わし合い、四人は、時々頼重やスヴァンの意見にも耳を傾けながら、魔が逃げ込んでいそうな場所について論議を重ねて行った。

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