剣姫は、異世界で性転換!?

天狗リンチ

第0話:始まりは…

『今現場につきました!なんという光景でしょうか……日本発の飛行機がインドに着陸しようとした瞬間、テロの手によって爆発…およそ250名の死亡が確認されています!』

 

 テレビは、無情にもその映像を流している。その中には両親の姿はない。だが、この飛行機に乗っていたのは確かだった。確信があるからこそ、私は不安で仕方がなかった。祈りたかった。

 (どうか…どうかお父さんとお母さんの飛行機ではありませんように…)

 …と。

 

 インドにて飛行機テロが報道されてから、3日ほどだった。

 家に電話が鳴り響き、心が落ち着かない私は、恐る恐る受話器に手を伸ばした。

 

 「…はい。天塚です」

 

 「あ…もしもし。美江…ちゃんで良かったかな?」

 

 「…はい。美江です。」

 

 「…その、僕は有馬といいます。今回電話をしたのは、知らせたいことがっ…」

 

 「死んだんですか…?」

 

 「え、あ……」

 

 「お父さんとお母さんは……あの飛行機に…乗ってたん…ですよ…ね」

 

 声が震えて止まなかった。

 涙も出ていた。

 体は、力が抜けるように崩れていきそうだった。

 真実はいつも非情だ。

 

 「あぁ…そうだよ。2人は亡くなった。」

 

 改めて人から聞く「亡くなった。」

 自分がよくわかっているのにも関わらず、その絶望は光を絶った。

 

 「……2人の死は、僕も悲しかったよ

。でも、後ろばかりに気を取られてしまっては、前を向いても進めないんだ。だから、その……」

 

 有馬さんは、泣き崩れている私を慰めるようにその言葉を投げた。

 

 「…僕が代わりじゃだめかな。今の君には付き添う人が必要だ。だから、二人に代わって僕が君を支える。2人ほど頼れる男じゃない…かも…だけど…それでも僕はがんばるよ!」

 

 代わりになる。

 両親の代わりなんて絶対なれない。でも、それを承知でその言葉を投げてくれた。私に必要なのは、付き添う人だと、言った。有馬さんなら、私に必要なものをくれる気がした。だから私は……

 

 「……うん。」

 

 と、答えた。

 

 「……なら、明日の午後に向かいに行くよ。そしたら、おじいちゃんの所に行こう。それじゃ、また明日。」

 

 有馬さんはそう言って電話を切った。

 あの言葉を聞いて、どこかホッとしている自分がいた。心に余裕を少しでも出来たからだ。死んでしまおうかと考えてた自分が、「また明日。」という言葉一つで、安心を覚えた。

 それが、まだ6歳だったときの私に起きた事。

 

 それから10年が経った。

 祖父に引き取られた私は、有馬さんも通う道場に行くことになった。

 祖父がそこの師範代のため、特別に入れさせてもらい、毎日剣を振ることが日常になっていった。初めは、確かに幼稚で力もなく、技もスピードもない完全な素人。でも、全てを失ったと思っていた私にこの剣をくれた祖父に対し出来ることは、祖父の名に恥じぬ剣士になること。亡くなった父と母に誓って、この剣に全てを捧げるようと私は、意地を張りつつも熱心に稽古を受けた。その結果、崩れながら積まれていく砂の山は、誰よりも高く硬いものになった。

 今年で16。これから向かう先は、剣道の全国大会。如月高校の代表として戦いを挑む。

 

 私の名は、「天塚美江」。

 

 祖父、「天塚照史」の手によって育てられた。「剣士」である。

 

 

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