機巧師(マキナ)と魔術師(マギア)の異世界席巻録
絵虫恵理
第1話 プロローグ
「お前とは家族の縁を切る出て行け!」
と言われたのがほんの4時間前、それから紆余曲折あり
今の状況にあるわけだが・・・
「貴方はどの様にしてこの警備を欺き、この都市に侵入したのですか?」
と剣らしきものを向けられている今、回想に入るのはお約束なので入らしてもらうのはご容赦願いたい。
◇ ◇ ◇
俺こと阿澄鳴(あすみめい)は何処にでもいる普通の高校生だ。 と言いたい所だが、そうと言えない要因が一つある。
俺の実家、阿澄の家は古くから【魔術】を扱う者、いわば【魔術師】の一族である。
【魔術】は簡単に言うと科学とは別の方法で超常の現象を起こす事だ。
現代日本では小説、漫画の中の娯楽作品には魔術の存在はあるが、現実にはないというのが当たり前、だが魔術は存在する。
決して表舞台では顔を出さず、一部の権力者しか正体を知らなかった。
その一家に生まれた俺も当然魔術を学ぶわけだが、特に才能にも恵まれず、可もなく不可もなくの技量を身に着けた。
だが、一点だけ他と違うモノを持って生まれてしまった。
いや、これ自体は誰でも持っているものだが、俺の場合はそれが異常だった。
それは【知識欲】
俺は一家の魔術の文献を全て読み漁り、それを覚えた。
それだけでは飽き足らず、他の魔術一家から文献を借り、
それも読み終えた。
話は変わるが日本の魔術師にはあるタブーがある。
それは、他流派の魔術系統を取り入れないこと。
日本の魔術師は鎖国的な考えで、自国の陰陽術が最高、他の魔術系統など学ぶに値はしないなどの考えが根強いからである。
だが、日本の陰陽術を学んだ次は世界の魔術を知りたいと思う気持ちが俺の場合は強すぎて、そんなくだらないタブーなどと吐き捨てて諸外国へと旅に出てしまった。
だがやはり何処からかその話が漏れてしまい俺は家からも、日本の魔術界からも追い出されてしまったわけである。
まあ、元々家は俺の事など最初からどうでも良いと思っていたようだが、
後悔はしていないが、やはり住み慣れた実家を追い出されたのは少々こたえた、
「しかしやる事がないな」
今日のホテルは見つけたし、着替えなども購入したので特にすることもない
散歩気分で少し歩いていると本屋が目に入った。
「ま、暇つぶしにはなるだろ」
と店の中に入った。
俺は魔導書や禁書は何冊読んだか分からないが、こういう娯楽の本を読むのは稀だ。
久しぶりに漫画や雑誌などを一通り読み終わって他に無いかと探していると、ある本が目に入った。
(ライトノベルか・・・)
それは最近流行っている異世界転生モノの小説である。
2冊、3冊目を通すと内容は似たりよったりで、普通の高校生が異世界に転生しそこで圧倒的な力を楽して手に入れ、魔王を倒すという物語であった。
たが俺が注目したのはそこではなく異世界の人間が使う【魔法】であった。
どれも炎や氷などのメジャーな術式しか使っておらず、長ったらしい詠唱など非効率的ことしかしていないので笑ってしまった。
所詮は創作物なので現存の魔術体制と違うのは当たり前で、作者がそれを知らないのは普通のことだが、あまりにも的外れ過ぎなことが俺の琴線に触れてしまって夢中で読んでしまった。
気が付くと辺りが暗くなっていて10時を過ぎていた。
(かなり面白かったな、しかも勉強にもなった)
新しい魔術作成のヒントもあったのでとても有意義な時間だった。
結構遅くなったのか、周りには人が見当たらない。
「っと そろそろ行かないといけないな」
とホテルに向かおうとした時、足元に急に【魔術陣】が出現した。
「なあっ!?」
(何の気配もなく、突発にだと!?)
「誰だ!」
だが、周りを確認しても、術式の反応はない
魔術師が魔術を行使する時は必ず術式の気配がある。
たが今回は、それが全くない。
(一体どれほどの手練だよ!?)
あの一家が俺を闇に葬ろうとしても、急過ぎる。しかも俺レベルを単独て葬ろうとするのはリスクが高過ぎる。
すると、ふと今日読んだ小説を思い出す
(まさか異世界からなのか!?)
一概にあり得ないと断言する事はできないが・・・
「とにかく対抗術式を組まないと・・・」
普通の人間ならばこの状況に為すすべもないだろうが、こちらは人智を超越した魔術師。
「散れ!」
すぐに術式破壊と対術式の魔術を行使するが・・・
「止まらないのかよ!!」
かなりショックだった。この13年間で積み上げてきた俺の努力を真っ向から否定された感じがした。
他にも【座標移動】や【存在偽装】の魔術を行使しても結果は同じだった
「ここまでか・・・」
諦めようとしたが、
「いや、まだだ!」
決めた。なりふり構わずに最大の対抗術式で破壊する。
もう、術式の隠蔽などに気を遣っている暇は無い!
「永久・・・」
と魔術を行使しようとした途端、急に力が抜ける。
「うっ!」
そのまま術式が行使される。だが、最後の力で術式のカテゴリーは解読できた。
(カテゴリーは転移、召喚系統か・・・)
だが、徐々に俺の意識は暗転していく
(クソッ!久しぶりに負けた・・・)
そこで俺の意識は消えた。
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