時間は有効的に
「ところで浅見さん」
「? なーに? 女神」
「『特殊講義』って、何する予定だったんですか?」
「えー? なんか適当に作品選んで作り方とかコンセプトとか説明すればいいのかなーって。そんなようなことパトロンも言ってたし」
「それ、時間いっぱいやるつもりでした?」
「んーん。きっと生徒さんもアク強かったりするんだろうなーって思ってたから、様子見て早めに切り上げるつもりだったよ? だって作品に思い入れがあるとかじゃないとつまんないよね?」
「それは人それぞれかと思いますけど……それならちょうど良かった。早めに切り上げるつもりだった分の時間、ちょっと私にくれませんか?」
「いいよー。女神が望むなら担当の時間丸ごとあげちゃってもいいくらいだし!」
「そんなには要りません。というか一応これお仕事でしょう」
「あ、視線が冷たいよ女神っ! 呆れ通り越して軽蔑しちゃった的な? でもそんな目もいいね! なんか創作意欲がムクムクと、」
「湧かせないでください」
「もうわいちゃったし! ……あれ、もしかして頭の話?」
「……流石に頭を指したつもりはありません。さんずいに勇気の勇の『湧く』です。沸騰の『沸く』じゃありません」
「……嬢さん、いっつもこんな会話してるワケ?」
「……。大体は」
「なんつーか、――……大変そうだな、嬢さん」
「ええ、もう本当に……」
「疲れてんなー」
「そうですね」
「時間もらって何するつもりなんです?」
「授業時間の一部ってことは、僕たちに関わること?」
「ご名答。ここに連れてこられた大本の理由、どうにかしようと思って」
「理由?」
「『え、何それ』的な顔に見えるがまさかまたすっかり忘れてんじゃないだろうなユズ」
「え。えーっとぉ……」
「忘れてるに決まってるでしょう、ユズなんですから」
「ひどいよミスミ!?」
「事実なんだから酷くないと思うよ? ……『彼女』のことだね?」
「そ。そもそもお前らそれがあったからこんな無茶苦茶なことやりやがったわけだし? だったらそれに関して無駄な時間を過ごすよりは多少のアクションを起こそうかと思ってね」
「って言っても何をどうするわけ?」
「とりあえず情報収集――っていうか私その子のことほとんど何も知らないし。あんたらのその子に対する非常識な行動についてなら知ってるけど」
「非常識ってひどくない!?」
「ひどくないひどくないむしろこれ以上ないほどぴったりだから」
「確かになー。俺が知ってる限りでもちょっとどうかと思うとこあったし」
「君は黙っててくれないかな?」
「それはお断りだなー。ンな楽しそうなこと見過ごすわけにはいかないって」
「事態引っ掻き回すつもりならお引き取りくださいね三笠さん?」
「いやいやそんなつもりはないですよ嬢さん? ンな怖い顔するなって」
「そのなんか企んでそうな笑顔引っ込めてから言ってくださいそういうことは。引っ込めても引っ込めなくても信じるつもりはありませんが」
「嬢さん辛辣~」
「愉快犯っぽい言動がなければもう少し当たり障りない対応したんですけどね。面白半分で事態引っ掻き回されたら被害が来るのはこっちですし」
「俺そーいうことしそうに見えんの?」
「見えます」
「清々しいほどの即答をアリガトウ」
「そこの『ついさっき知り合った人』、みっちゃんに似てるね~」
「……そうですね。だから警戒してしまうんでしょう」
「『みっちゃん』?」
「奏兄さんの知り合い。快楽主義の刹那主義の愉快犯で変態な変人」
「……俺、その人に似てんの? スゲー嬉しくないんだけど」
「喜ばれても困ります。ああいう人は一人で十分――いや、できるだけ身近に居ない方がいいですし」
「女神女神、それはヒドイと思うよ?」
「いいんですよここに居ませんし。居たとしても別にあの人気にしませんし」
「まあそうだけど~。むしろ面と向かって言ったら喜ぶかもだしねぇ」
「いやホントそんな人と似てるとか言われるのは心外なんだけど」
「是非ともそう思ったままでいてください」
「いやだから、」
「それで情報収集って何をするつもりなのかな?」
「オレたちからも話聞くー?」
「協力は惜しみませんから遠慮せずどうぞ」
「…………(こくこく頷いてる)」
「――三笠さん押し退けてまで言い出さなきゃならないほど切羽詰った内容なのかそれは」
「…………お前らほんっと嬢さん好きなのな……」
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