なんだかんだで結構甘い
「このッ、馬鹿どもー!」
「はいっ!?」
「ユズ、それで『はい』って返事しちゃうのはどうかと思うよ」
「お帰りなさい、――って、その後ろの、どうしたんです?」
「『後ろの』って、ヒデェなその言い方。あんたがそんな忌々しそうな顔すんの初めて見た」
「『それ』どうしたんです? 付き纏われてるならそれなりの対処はしますよ?」
「無視? 相変わらず嫌われてんのな、俺」
「人間を『それ』呼ばわりするな、ミスミ。声かけられたついでに情報提供者になってもらっただけだっての。どこかの誰かさんたちが聞いたことにすらまともに答えてくれなかったものでね?」
「…………」
「レンリ?」
「………………」
「言っとくけど、まだあんたら許したわけじゃないんだからね?」
「……………………」
「……わかったわかった。そっち行けばいいのはわかったから引っ張るな」
「……嬢さん何者なわけ?」
「君には関係ないよ」
「あんたには聞いてないっての。なあ、嬢さん。情報提供のお礼代わりに教えてくれない?」
「あなたが勝手に喋ったんでしょう……と言いたいところですが、まあ良いです。ただの幼馴染ですよ。見てわかりませんか?」
「幼馴染、ねぇ……」
「それ以外の答えは持ち合わせておりませんのであしからず」
「ああいや、別に疑ってるわけじゃない。ちょっと意外だっただけで。こいつらに、こんな風に接する相手がいたとはねぇ、っていう。むしろ感心してる的な」
「その言葉、何やら不安を煽りますね。納得もしますけど。――っつーわけでカンナ。きっちり説明してもらおうか」
「何をかな?」
「この上まだしらばっくれるつもり? この制服、『特別クラス』の制服だって? ンな悪目立ちするようなもんだとはひとっことも聞いてないんだけど」
「聞かれなかったから答えなかったまでだよ」
「ふざけんなよこの腹黒が。目立つの嫌いで平穏をこよなく愛してる私に対する嫌がらせか嫌がらせだなわかった今すぐ帰ってやろう」
「待って待って一足飛びにその思考に飛ばないでー! 『特別クラス』所属にしたのは単に快適な学校生活になるようにっていうオレたちなりの気遣いっていうかそんなのだから! 嫌がらせじゃないから!」
「だったらなんでそのこと先に言わなかった? 聞いてみれば『特別クラス』って男しかいないんだって? 悪目立ちどころか都市伝説並みの扱い受けるとしか思えないね。道理で同じ制服着た人がいない上にやたらめったら視線を向けられるわけだ。ただでさえあんたら目立つのに何それ拷問? 別に私は今すぐ帰ったって何の問題もないんだよ付き合ってやってんのはいちいち抵抗すんのが面倒だったから以外の何物でもないし。『お試し期間』っつったのはあんたらなんだから、その『お試し期間』を今すぐ終了させたって文句は言えないよなー?」
「落ち着いてください。先に言わなかったのは、言えばその時点であなたが帰ってしまうのではないかと危惧したからです。私たちはできる限りあなたに快適な学園生活を送って欲しいんですよ。それには私たちと同じクラスであることが最も都合がよいのです。確かに隠すようなことをしたのは悪かったですが……」
「……はあ。まあ、あんたらのやることだってのに、こういうことになる可能性をちゃんと考えてなかったこっちが悪いっちゃ悪いけどさぁ。せめてこの制服フツーのに換えてくれない? 珍獣でも見るような――っつーかツチノコやらネッシーやら見るような目で見られるのは心の底からお断りなんで」
「……わかった。標準服をすぐに用意させるよ。それだったらまだ通ってやっても良いって思ってくれる?」
「あー、うん。まあ1日くらいは。『お試し期間』だし」
「えー1日ー? 一緒にここ通おうよー、オレ昔っから夢だったんだよー?」
「うるさいユズ。無理やりここに来させられたこっちの心情も考えろ。そのまったくもって理解できない夢とやらをこの先現実にしたいってんならそれ相応のことをして気が変わるように仕向けてみなよ。あんたには絶対無理だと思うけど」
「うっ! ……オレだってやればできるって!! ……多分」
「ハイハイそうですねーユズはやればできる子だもんねーガンバレー」
「何その投げやりっていうか棒読みな声援?!」
「言っとくけど今現在この学園に対する心象マイナス値だから。主にあんた達の言動のせいで。一応『お試し期間』くらいは設けてやるけど、それ終わったらとっととオサラバするつもりだし。……ま、せいぜい頑張りなよ?」
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