第26話 施設オーケストラ団

 その時、アナウンスが聞こえてきた。

 「お食事に、ご歓談に、御寛ぎの所を失礼します。

 10分後には、ドンを含めた私設オーケストラ団の演奏を行います。

 ホールにて行いますので、興味のある方はお越しください」


 皆が言い交してる。

 嬉しそうに『御』も呟いてる。

 「ほう…。楽しみだな」

優介は急に居なくなった悟さんを目で探していた。

 「あれ?どこに…、さと」

 

 続いて、アナウンスの声が聞こえてくる。

 「飛び入り、大歓迎です。

それでは、日本からのゲスト。サトル様です。バイオリンを弾いてくださるそうです」


 「えっ…。サトル様って悟さん?ど、どうしましょう…」

 ふぅっ…、と溜息吐いた『御』は優介にこう返した。

 「あいつは目立ちたがり屋だからな…」


 サトルは、ソロで3曲を奏でた。

 「サンキュ」

 と言って、拍手をしてくれた人に投げキスを返した。


 それを見ていたユタカは呟いていた。

 さすが、スーザンの息子。目立ちたがり屋め…。


 ステージから下りたサトルは、ユタカの持っている楽器を見ると、驚いて首を傾げている。あれは、フルートではなく、クラリネットだよな。なんでだ?


 ステージ上では、エドワードが朗らかに言ってる。

 「私はね、バス仲間がいて嬉しいんだ!

 タカとジュンヤと私がバスで、

 ワンのチェロと、マサとユウマのヴィオラ。

 ロンとヒロのバイオリンと、ユタカのフルート。

 …あれ、フルートはどした、ユタカ?」


 ここのところ、毎度おなじみのセリフで聞き飽きたユタカは、苦笑を返した。

 でも、エドは気にせずに続ける。

 「カズキのトロンボーンに、トモのペットに、ヨウイチのピッコロー!ロンもバイオリンだし、ヒロも嬉しいだろ」

 歌う様に、軽やかに言ってくれる。

 ヒロトは、そんなご機嫌エドに返した。

 「エドは、今日もご機嫌だな」

 「そりゃ、そうさっ。大好きな音楽に囲まれてるんだ」

 ふふっと笑いながら、ヒロトはエドに言った。

 「今のエドの表情…。あの頃と同じだ。私はね、しかめっ面のマルクより、明るく朗らかにしているエドが好きで、くっ付いていたんだよ」

 「嬉しい事を言ってくれるヒロに、ご褒美ー!

 音出し時間を2分にしてあげよう」

 「ダンケ。それじゃ、アップを2分。レディ…?」


 ヒロトのバイオリンがソロで10秒間、そして第二バイオリンのロンも10秒間、残り10秒間の計30秒間はバイオリンの音出しだ。

 30秒後には、中低音の楽器が入ってきて60秒間を共にする。

 残り30秒間には高音の楽器が入って、中低高が共にハモると、音が止んだ。

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