第23話 友明&亡き親友の忘れ形見

 ドンとなった友明は、その2時間ほどの間に色々な人と会話を交わした。

 日本から『御』に付いて来た男性は、どことなく康介に似ている。

 思わず、その名を口にしていた。

 「こう…す…け…」

 それを聞いた男性は、複雑そうな表情をしていた。

 「トモ兄は、いつまでもお父ちゃんの事を思ってるんだね。嬉しいな。

 でも、なんか複雑な気分だ…」

 トモ兄、お父ちゃん…って、まさか…。

 思い当たった友明は、優しく言ってきた。

 「優介か。康介かと思ってしまったよ。よく似てる」

 自分の名前を呼んでくれて嬉しくなった優介は、友明に抱きついた。

 「トモ兄っ!」

 よしよし…、と友明は優介を優しく背中をポンポンと叩いていた。

 「元気そうだな。どうだ、サトルとの生活は?」

 「うん。悟さんも優しいし、楽しいよ」

 「それは良かったな」


 「御は、大学に行かせてくれたんだ。せめてもの恩返しを、これからしていこうと思ってるんだ」

 「良かったな。御は厳しいが、頑張ってる人間が好きな人だ。

 贔屓する時もあるが、目を掛けた人間には、とことん目を掛けてくれるからな。

 これからも、頑張れよ」

 「うん。トモ兄も、元気で頑張ってね」


 友明は溜息を吐いて、優介の頭をグリグリとしていた。

 「優介!お前は、何度言えば分かるんだっ。

『うん』ではなく、『はい』だろっ!」

 「はいっ!ごめんなさいっ!」


 あはははっ…。

 悟さんが笑いながら、口を挟んでくる。

 「まるで、あの時と一緒だね」

 「悟さん。あの時って」


 サトルは、ボスから優介を剥がしながら言ってきた。

 「優介が、うちに初めて来た時。君は『うん』のオンパレードで、ボスに頭をグリグリされて、今と同じことを言われ、君も、あの時と同じ言葉を言った」


 御も、口を挟んできた。

 「ああ…。たしかに、そうだったな。皆で笑ったもんだ」


 友明は、とんでもない事を言ってきた。

 「お前は、あれから20年近く経っても、変わってないってことか…」

 「いやいや、変わったよ。好きな人も出来て、マナーとかも習って…。

 あ、そうだ。背も伸びたよ」


 それを聞いた友明とサトルは、同時に溜息を吐いた。

 友明が、

 「そういや、天然なところは、しっかりと天然なままだな」

 サトルは、こう応じた。

 「大らかになった、と言って欲しかったな」


 すると小声になり、サトルに言う。

 「で、優介の身体を開発して、自分のモノにしたって事か?」

 それを聞き、サトルは真っ赤になった。

 「なっ!なんて事をっ・・・。ボスッ!」



 ハハハッと笑いながら、その場を後にした友明は食い物ブースに向かった。

 「腹が減ったぁ。何があるかな、何が残ってるかな」

 と、歌う様に呟きながら。


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