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「何か良いことでもあったのですか?」

「えー、いや、まぁ」

 無いこともないけど、と指に髪を巻き付けながら言う。その仕草からして乙女チックだ。

「良かったら聞かせてください」

「えー本当大したことじゃないし」

 と言いつつも言いたそうじゃないか。なんでもおっしゃい、どんなことでも聞きますとも。

「実は」

「はい」

「ここ最近、週に一回は一緒にご飯に行っていて」

「ほお、それは良かった」

「で」

「はい」

「っ」

 言おうとして一度言葉を飲み込むと、口元に手を当て言いづらそうに視線を外した。

「今度」

「今度?」

「今度、遊園地に二人で行く事になったの」

 ここが漫画の世界なら、きっと蘭子さんのセリフの後に“ひゃーっ!”のセリフと共にコマ一杯に花が描かれていたことだろう。それくらい『嬉しい』が溢れ出ているように見えた。

「それは凄いじゃないですか」

「え、ふふ、そんなに、凄いことじゃないわよ。アラサー二人で遊園地なんて、ただ遊びに行くだけだし」

 なんてことを言っても笑みが零れまくりじゃないか。いいじゃない、隠さなくったって。中学生みたいに『すっごく楽しみ!』って全開で喜びを表したっていいんだぜ? 大人になったって、好きな人と遊びに行く事は楽しいことに違いないのだから。


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