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そうして今。あたしは、花を売っている。

だらりと、抗うことなくベッドに倒れ伏したあたしの体。何もまとわず、ただ目の前の哀れな人を、一歩引いたまま見つめていた。

がつがつと、あたしの体にのしかかったまま、必死に腰を振る男の人。その表情は苦しそうに歪んでいた。

あたしには、男の人の性欲とやらはわからない。

ただ、それは苦しいのだろうと思う。

だって道行く人にさえ、不埒な行為を働きたくなるくらいなのだから。

飢えた人におこぼれをあげるように、眠れぬ人をそっと寝かしつけるように。

誰かを傷つけそうなほど、求めてくる人がいるのなら。ただ淡々と満たせばいいと思ったから。

満たされず、飢え続け、どう足掻いたって止まらなくなっていくのは。

どうしようもなく、かわいそうだったから。

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