第22話

「とにかく今はそんなことを議論している場合じゃないよ。今日はこの洞窟を徹底的に調べると決めたんだからね」


「でも調査隊が何回も入っているって上条から聞いたぜ。それなのにこれ以上、何か見つかるのか?」


「一つ。調査隊の調べる対象と僕らの調べる対象は、まるで違う。二つ。専門家でも見落とすことは、ある。三つ。発見したことを、全て公表しているとは限らない。以上だよ」


上条が言った。


「どちらにしても、封印されなきゃならないようなものがここにいて、それが犬田に何かしたということが前提になるわけだな」


「そうだよ。それについては、二人とも何の異論もないだろう」


「どうしてそう思う」


「だって二人とも、人並みはずれてオカルト好きだし、同時にそう言ったものの存在を、当たり前のように信じているんだからさ」


そう言うと、桜井は大口を開けてげらげら笑った。


上条は、普段感情をあまり表に出さない桜井が、こんなにも笑うところを初めて見た。



三人は探した。


普通探し物をするときは、探すものが何であるかがわかっているものだが、今回は違う。


何かを探すのだ。


それでも三人は懐中電灯を頼りに地を這い、登れるところはよじ登り、隅々まで探した。


――ほんと、何にもないところだな。


上条がそう思っていると、桜井の姿が目の隅に入った。


――何してるんだ、あいつ?


見てみると、桜井はスマホで岩の壁を撮影していた。上条が近づき、聞いた。

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