第18話

「毎週必ず見ている番組が、けっこうな数あるぜ。全部バラエティだけどな」


「ニュースは」


「自慢じゃないが、大学に入ってからニュースなんて一つも見てないぜ」


「確かに自慢にはならないな。新聞は?」


「取ってない」


桜井が小さくため息をつき、木本をあきらめて上条に聞いてきた。


「上条は何か思い当たることはないのかい」


「火事か」


入学して間がない頃、大学近くのマンションで火災があった。


住人はみんな逃げ出して死人は一人も出なかったが、マンションは折からの強風にあおられて、不運にも全焼した。


「それじゃないよ。もう一つのほうだよ」


「じゃあ、例の洞窟のことか」


「それだよ」


マンションの火事から数日後に、大雨が降ったわけでもないのに、大学近くの山が地すべりを起こした。


そしてそこに洞窟が見つかったのだ。


洞窟の入口は石をきれいに積み上げて壁のようにして塞いでいたが、それも地すべりのときに一部が壊れて、人が入れるようになった。


全国ニュースでも数回ほど、ローカルニュースでは何度も取り上げられ、専門家による調査も行なわれたが、明らかに人の手が入ったその洞窟が、誰が何のために作ったのかと言う基本的なことすら判明しなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る