第271話プロローグ⑦

「これはどういうことだ?」


「彼は賀茂家にとられたってことですが?」


私ことアリシアは意味が分からず、首をかしげました。


目の前で年下の上司であるエミリーが、私の書いた報告書を見ながら騒いでいます。


執務室で書類仕事をしてる最中なので、手短に済ましてほしいのだけど。


「そうじゃない。どうして”フィアンセ”って書いてあるんだ? カズちゃんのフィアンセは私だろ?」


「そうですねえ。世間に認められていないからじゃないですか?」


いつものことですが、手のかかる上司だ。


「huhuhu。愛には障害がつきものだからねえ」


頭が悪いのは以前からですが、彼と出会って磨きがかかったような気さえします。


恋は盲目と言いますし、仕方がないんでしょうか?


これだけ美人でスタイルもいいんだから、彼ももらってあげてもいいのに。


「待ってて。今悪い魔女から救ってあげるからね」


私はさい先を憂いて、ため息をつきました。

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